小説

亡羊の嘆

椹野道流『亡羊の嘆 鬼籍通覧 (講談社ノベルス)』講談社,2008 シリーズ感想 椹野道流さんの作品感想 ミステリなのにホラー風味な赴きもある、検死官を主人公にしたシリーズ6巻目。主人公を始め法医学教室の面々はコミカルなのがポイントです。 そんなメンバ…

ガリレオの苦悩

東野圭吾『ガリレオの苦悩』文芸春秋,2008 シリーズ感想 東野圭吾さんの作品感想 天才物理学者・湯川が関わった事件をまとめたシリーズの短編集です。 怪しい犯人のアリバイに挑む、湯川先生と内海が出会う話「落下る」湯川の恩師が関わる殺人事件「操縦る」…

ファミリーポートレイト

桜庭一樹『ファミリーポートレイト』講談社,2008 桜庭一樹さんの作品感想 「ママに必要とされていることが誇り」とあり、見ていて気持ちいいものではない親子関係が描かれている物語。マコのコマコに対する「愛してる」の言葉も目を背けたくなります。 伝え…

セリヌンティウスの舟

石持浅海『セリヌンティウスの舟 (光文社文庫)』光文社,2008 石持浅海さんの作品感想 性別も年齢も職業もバラバラだけれども、漂流をきっかけに見えない絆ができた6人の物語。その中の一人の女性が自殺することから、物語は行き先の見えない波にのって漂い…

ニート

絲山秋子『ニート (角川文庫)』角川グループパブリッシング,2008 絲山秋子さんの作品感想 上から目線になりたくないけど、接しようとすると立ち位置に迷ってしまう相手・ニートがテーマ。KeiKomoriさんの感想を読んで手にとりました。この本に出てくるニート…

戸村飯店青春100連発

瀬尾まいこ『戸村飯店青春100連発』理論社,2008 瀬尾まいこさんの作品感想 実直で戸村飯店にどっぷりつかっている弟・コウスケと、器用でひょうひょうと東京へ出て行った兄・ヘイスケの日常が、交互に視点を入れ替えつつ関西弁で描かれています。 コウスケが…

秋期限定栗きんとん事件〈上〉

米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)』東京創元社,2009 シリーズ感想 米澤穂信さんの作品感想 目立たないよう小市民として生きようとしている小鳩くんと小佐内さんの話。一体どうなってるんだろうと思うまもなく、小鳩くんがクラスメイト…

禅定の弓

椹野道流『禅定の弓 鬼籍通覧5 (講談社X文庫 ホワイトハート)』講談社,2007 シリーズ感想 椹野道流さんの作品感想 動機が不明の放火殺人と連続動物殺傷事件の死体の解剖に立会い、謎と人間の闇に対峙する法医学教室を舞台にしたシリーズ5巻目。縊死にも色ん…

テンペスト 上

池上永一『テンペスト 上 若夏の巻』角川グループパブリッシング,2008 池上永一さんの作品感想 琉球を舞台に、龍の交尾があった嵐の日に生まれた少女・真鶴あるいは寧温の物語。deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。 環境は恵まれていないものの、溢…

暗黒童話

乙一『暗黒童話 (集英社文庫)』集英社,2004 乙一さんの作品感想 目が見えない少女のために、他の人の目を取ってくる烏の童話が作中作として収録されている、なんともグロテスクな出だし。烏が取ってきた目のおかげで、少女は色のついた世界を見れるという設…

造花の蜜

連城三紀彦『造花の蜜』角川春樹事務所,2008 連城三紀彦さんの作品感想 香奈子が離婚し一人で育ててきた、息子の圭太の誘拐を巡る話。新聞で連載されていたものです。architectさんの感想を読んで手にとりました。 誘拐事件が発生するのですが、周囲の人物が…

橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ

橋本紡『橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ』文芸春秋,2008 橋本紡さんの作品感想 水の都・深川を舞台に描かれる短編集です。最初は、久しぶりに戻った実家付近の、変わってしまった風景に戸惑う有香の話「清洲橋」資料館での弟との電話でつながっ…

家守綺譚

梨木香歩『家守綺譚 (新潮文庫)』新潮社,2006 梨木香歩さんの作品感想 文筆業を営む綿貫が、友人の高遠が以前住んでいた家にひょんなことから住むことになる物語。その家で起こる日々の出来事が記されています。deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。…

秘曲 笑傲江湖 3

金庸『秘曲 笑傲江湖〈3〉魔教の美姫 (徳間文庫)』徳間書店,2007 シリーズ感想 金庸さんの作品感想 令狐中はいったいどこへ行こうとしているのか、凄腕のキャラクターが多数登場するシリーズ3巻目。前回の続きで、仲の良い二人を眺めているのが辛いという令…

別冊 図書館戦争 1

有川浩『別冊 図書館戦争〈1〉』アスキーメディアワークス,2008 シリーズ感想 有川浩さんの作品感想 図書館隊が活躍する図書館シリーズの別冊。郁と堂上のコンビ、というかカップルの行方が5つの話を通して描かれています。完結編でも甘い雰囲気が辺りに立…

隻手の声

椹野道流『隻手の声 鬼籍通覧4 (講談社X文庫 ホワイトハート)』講談社,2006 シリーズ感想 椹野道流さんの作品感想 法医学者が主人公のシリーズ4巻目。今回は完璧にミステリからは遠ざかりました。ホラーからも遠ざかっています。いったいどこへ進もうとして…

退出ゲーム

初野晴『退出ゲーム』角川グループパブリッシング,2008 初野晴さんの作品感想 弱小吹奏楽部の部員であるチカとハルタが巻き込まれる4つのお話。architectさんの感想を読んで手にとりました。 文化祭の準備中に盗まれた劇薬と脅迫状を巡る「結晶泥棒」六面全…

七つの海を照らす星

七河迦南『七つの海を照らす星』東京創元社,2008 七河迦南さんの作品感想 田舎にある児童養護施設「七海学園」で働き始めた保育士・北沢が接触する、いくつかの不思議な話を通して展開されていく物語。探偵役の児童相談所の海王さんとコンビを組んで謎を解き…

船に乗れ!〈1〉合奏と協奏

藤谷治『船に乗れ!〈1〉合奏と協奏』ジャイブ,2008 藤谷治さんの作品感想 過去を回想する形式で語られる物語。序章は視点がぼやけているような印象を受けたのですが、なんかその時点でもう虜にされていました。これは絶対に面白いという確信が、どうしてか分…

薄妃の恋―僕僕先生

仁木英之『薄妃の恋―僕僕先生』新潮社,2008 シリーズ感想 仁木英之さんの作品感想 のんびりまったりな青年・王弁と少女の姿をした仙人・僕僕の気ままな旅を描いたシリーズ2巻目。王弁でなくとも「ボクについてくることだ」と言われたら、ついていくしかない…

雨にもまけず粗茶一服

松村栄子『雨にもまけず粗茶一服〈上〉 (ピュアフル文庫)』ジャイブ,2008 松村栄子さんの作品感想 坂東巴流という弱小流派ではあるものの、お茶の家元の息子・遊馬がバカなことをやり、京都へ逃げ出すことから始まる物語。deltazuluさんの感想を読んで手にと…

Re-born はじまりの一歩

『Re-born はじまりの一歩』実業之日本社,2008 「はじまり」をテーマにしたアンソロジー。音楽が好きで好きで音楽とともにいるのが当たり前だと思っていたのに、音楽科のある高校に落ちてしまった女の子の話。宮下奈都さんの『よろこびの歌』ぶらぶらしてい…

恋するたなだ君

藤谷治『恋するたなだ君 (小学館文庫)』小学館,2008 藤谷治さんの作品感想 地図の会社にいるのに方向音痴な29歳で、カブト虫が友達のたなだ君。その方向音痴っぷりを発揮して不思議な街に迷い込み、そこで理性を吹っ飛ばして女性に一目惚れする話です。相…

妙なる技の乙女たち

小川一水『妙なる技の乙女たち』ポプラ社,2008 小川一水さんの作品感想 カーボンナノチューブで紡いだ糸を使った静止衛星上からの軌道エレベーターが完成し、世界で最初に建設が始まったシンガポール沖、リンガ諸島が舞台。deltazuluさんの感想を読んで手に…

偽物語 上

西尾維新『偽物語(上) (講談社BOX)』講談社,2008 シリーズ感想 西尾維新さんの作品感想 阿良々木さん宅の妹で、ファイヤーシスターズと呼ばれている火憐と月火に焦点が当たっています。満を持しての妹様ですが、墨汁で髪の色を戻す阿良々木のお母さんも見て…

壷中の天

椹野道流『壺中の天 鬼籍通覧(3) (講談社X文庫ホワイトハート)』講談社,2005 シリーズ感想 椹野道流さんの作品感想 法医学とミステリをテーマにしたシリーズ3巻目。ダンスダンスレボリューションの名前を見つけて懐かしくなりました。下手なくせにそれに熱…

〈本の姫〉は謳う 2

多崎礼『“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)』中央公論新社,2008 シリーズ感想 多崎礼さんの作品感想 特殊な本である「姫」と本の持ち主であるアンガスの話、そして聖域の住人・アザゼルの話が入れ替わり登場する物語。故郷での話を読んでいると、…

大正野球娘。〜土と埃にまみれます〜

神楽坂淳『大正野球娘。―土と埃にまみれます (トクマ・ノベルズEdge)』徳間書店,2008 シリーズ感想 神楽坂淳さんの作品感想 大正時代を舞台に男と野球で勝負するシリーズ2巻目。勝負のためにあの手この手を繰り出すのですが、時代の違いによるギャップを味…

ふにゅう

川端裕人『ふにゅう』新潮社,2004 川端裕人さんの作品感想 お父さんと子供の関わりを描いた短編集です。書下ろしを含む5個の話が収録されています。 「おっぱい」おっぱいにこだわりを持っている洋介が、妻の麻衣子が授乳しているのを眺めていて嫉妬する話…

ミノタウロス

佐藤亜紀『ミノタウロス』講談社,2007 佐藤亜紀さんの作品感想 地主に成り上がった親父を見て育った息子・ヴァシリの物語。小さい頃から話は始まりますが、常にシニカルな視線で語られています。 この本に納められている物語は、まさしく表紙の茜色に染まっ…