戸村飯店青春100連発

戸村飯店青春100連発  Amazon
コミカル4癒し4恋愛2
瀬尾まいこ戸村飯店青春100連発理論社,2008
瀬尾まいこさんの作品感想



実直で戸村飯店にどっぷりつかっている弟・コウスケと、器用でひょうひょうと東京へ出て行った兄・ヘイスケの日常が、交互に視点を入れ替えつつ関西弁で描かれています。
コウスケがすんなり入っていく世界に、努力しても入れてもらえないヘイスケが辛いわー。大阪でも東京でも、つつがなく暮らしているようでいて、絶妙に宙ぶらりんな状況ですから。
断片的なエピソードを読んでると素直で憎めないやつです。アリさんが登場したときには安心しましたよ。あるいは、けったいな友人・古嶋とかね。
そして、たった十二本のポカリの分け方に気づけたヘイスケを見て、素直に心からよかったーと思えましたもん。ただ、恋愛にも努力が必要かもと考えるヘイスケを見てるのは胸が痛かったですけども。


コウスケはあんまり心配していなかったですし、ピアノがうまい北島くんが水先案内人として存在し始めてからは、どっしりと構えて読むことができました。戸村飯店での生活空間しか知らなかったコウスケが、少しずつ世界の広さを知っていくシーンは大好きです。
……それにしても、同じ部屋で無防備にマンガを読んでごろごろしているのを眺めることができる環境ってすごく素敵なような。


受け答えなどで兄弟だから似てるな〜と思ったことも。互いを通して自分を見つめなおす構図がおいしいです。細かい小道具がふとしたきっかえで再登場することもあり、全体的な流れも感じられてとっても面白かったですよ。


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