禅定の弓

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ミステリ4癒し3コミカル3
椹野道流禅定の弓 鬼籍通覧5 (講談社X文庫 ホワイトハート)講談社,2007
シリーズ感想
椹野道流さんの作品感想
動機が不明の放火殺人と連続動物殺傷事件の死体の解剖に立会い、謎と人間の闇に対峙する法医学教室を舞台にしたシリーズ5巻目。縊死にも色んなパターンがあるなどのネタも含まれています。
死体関連だけではなく、他の生活問題などを取り上げているところも味噌。私が前から不思議に思っていたことにも言及されていました。トンボの足に糸とか蛙に爆竹などの遊びを、なんで悪びれもなく話せるのか分からない点です。ほんと痒いところに手が届く話題の振り方だな〜。
昔はやんちゃだったと自慢したいんですかね。そういう話を聞くと、塾通いで忙しいけれどもチーム的な感覚は持ってる、今の子供たちのほうがいい気もしますが……。偏見入ってるし、簡単には結論出せないんですけど。


そんな話題も絡んでくるので、先が読めてきて気分が重くなる場面も。鬱屈とした嫌な予感ってのは当たるもんですね。
嫌な気分を払拭してくれるのが、コミカルな語り口なのに誠実に真面目な話と向きあう伊月たちです。この辺りのバランスは、非日常な仕事に携わっているおかげなのかしらん。とても居心地がよいのですよ。
また、動物が被害者になる事件は起きるものの、その一方で猫の話ばかりの伊月やインコを拾ってくる龍村など癒し系の描写もあります。こちらもまた、光と闇のスポットの当て方が好み。


飯食べてるときの、「ししゃもが、いつ越してくるんやって訊いてるで?」のセリフなど、筧と伊月の仲が伺える話ににやり。男と男だけどノー問題。
そういや、伊月たちの成長が一番の魅力であると思われるシリーズだけれども、まだ恋愛関係の要素はないな〜。その辺りが出てきてもおかしくないと思うし、戸惑う伊月が想像できて面白いと思うんですが、いかが。