Re-born はじまりの一歩

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癒し7コミカル3 宮下奈都『福田栄一『瀬尾まい子『中島京子『平山瑞穂『豊島ミホ『伊坂幸太郎『
Re-born はじまりの一歩実業之日本社,2008


「はじまり」をテーマにしたアンソロジー。音楽が好きで好きで音楽とともにいるのが当たり前だと思っていたのに、音楽科のある高校に落ちてしまった女の子の話。宮下奈都さんの『よろこびの歌』ぶらぶらしていた大学生が、老人から泳ぎ方を教えてくれと頼まれる話。福田栄一さんの『あの日の二十メートル
兄へのラブレターの代筆を頼まれる高校生の話。瀬尾まいこさんの『ゴーストライター』鼻に関する会話で繰り広げられる話。中島京子さんの『コワリョーフの鼻』とある一人の女性を巡る話。平山瑞穂さんの『会ったことがない女
溶け込むのが得意な転校生と孤高に過ごしていた女の子が出会ったことから始まる話。豊島ミホさんの『瞬間、金色家族解散ということで秘密を暴露しあうはずが、トンでもない展開に巻き込まれる話。伊坂幸太郎さんの『残り全部バケーション』以上、7作品が収録されています。



よろこびの歌』のように挫折した主人公と合唱際の舞台という組み合わせであるものの、エンタメではなく文学的な雰囲気があるものや、『コワリョーフの鼻』のように、どんな幻想的な結末があるのだろうと思っていたら、妙にほほえましいものがあったりと新鮮でした。
あの日の二十メートル』は短編なのでひっくり返しの連続があったりはしませんが、カレーに釣られるおバカな展開とか妙に座り心地のいい空気いすのような結末は健在でよかったです。


瞬間、金色』で登場する主人公の女の子が「もう、しないよ」と言葉を振り絞ったのは、素敵に瑞々しかったです。また、「その、性犯罪……みたいなのもだめっ」とか友達の彼氏に対する発言とは思えない、ピントのずれ感もよいですな〜。
残り全部バケーション』は相変わらずの伊坂節で安心して楽しめました。嘘から出たまことというかなんと言うか。家族解散という大きな出来事なのに、妙にゆるゆるな雰囲気です。情けない描写盛りだくさんだけれども、パパさんを応援したくなりましたね。
バックミラーばかり見てたら、危ないじゃないですか。」や岡田さんが最後に残した言葉など、車に関連する迷言がすごく印象に残っています。


初めて読んだ作家さんで一番の収穫は『ゴーストライター』の一択。ラブレターの代筆を頼まれるという青春ラブコメっぽい入り方でわくわくさせられ、かつそこからの展開はすばらしく私好み。『ぼくは勉強ができない』とか好きなのですよ。
人間失格の読書感想文の下りとか、息が詰まるかと思いましたもん。この話は長編としても出版されているそうなので、ぜひ読みたい。


宮下奈都さんの作品感想
福田栄一さんの作品感想
中島京子さんの作品感想
瀬尾まい子さんの作品感想
平山瑞穂さんの作品感想
豊島ミホさんの作品感想
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