造花の蜜

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ミステリ8癒し2
連城三紀彦造花の蜜角川春樹事務所,2008
連城三紀彦さんの作品感想


香奈子が離婚し一人で育ててきた、息子の圭太の誘拐を巡る話。新聞で連載されていたものです。architectさんの感想を読んで手にとりました。
誘拐事件が発生するのですが、周囲の人物が警察を含めて、みんな怪しく見えて仕方ないです。複雑な家庭環境なのでなおさらね。タイトルでもある「造花の蜜」をほのめかすイメージが何度も出てきたり、不気味さが周囲に渦巻いています。
誘拐前のスーパーでの出来事さえも、疑心暗鬼な香奈子の心持が描かれただけかと思いきやの反転があったりしました。これのおかげで、誘拐された本人である圭太の言葉でさえも、どこまで信用できるか分からなくなりましたよ。
事件が起きてからはどんでん返しの連続。驚いた度にしおりを挟みこんでいたのですが、どうにも分厚くなってしまったので途中で止めました。あまりにも常識はずれな犯人なので、おかしなことばかり。展開が予想できない。


あまりに突飛な出来事ばかりだったので、上記の感想を読んでいたにも関わらず、本当にうまく謎は解決されるんだろうかと不安になったりも。……もちろん杞憂でした。物語は途中で共犯者の視点で描かれるのですが、明かされていく話に唖然とするしか。この幾重にもめぐらされた構造はすごい。
あと、この共犯者が事件に誘われるシーンはエロスが感じられて、かなりドキドキしました。ほんの1ページの出来事なんだけど、思わず釘付けになってしまいましたよ。この蜜には誘われても仕方ないですよ。って、なんの話をしてるんですかね私は。


この犯人像が認められるのは、本格ならではでないでしょうか。いや、本格ってなんなのさって位読まないジャンルだし知識もないけど、感覚的に。本格推理小説でしか描けない魅力的な人物と謎だと思います。子供を誘拐すると言う卑劣な手段を使う犯人に、憧れさえ抱いてしまいました。
何度も何度も驚かされ、想像つかない不思議な謎を提示され、さらには素敵なエピソードで締めくくられているこの物語。読まないのは損ですよね。


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