薄妃の恋―僕僕先生

薄妃の恋―僕僕先生  Amazon
コミカル4癒し3萌え3
仁木英之薄妃の恋―僕僕先生』新潮社,2008
シリーズ感想
仁木英之さんの作品感想
のんびりまったりな青年・王弁と少女の姿をした仙人・僕僕の気ままな旅を描いたシリーズ2巻目。王弁でなくとも「ボクについてくることだ」と言われたら、ついていくしかないですよね。
その他のキャラクターも、不空を始めとしたみょうちきりんな人物たちがいい味だしてます。「精が出るわね」の司馬の受け答えにもくすり。すごい人なのに、地に足がついている考え方とか苦労を抱え込んでしまいそうな性格にニヤニヤしてました。酔っ払いの女神との掛け合いも楽しかったな。
そして、船を釣ったりする場面を見て、ああこれは仙人の話だったんだと思い出しました。僕僕のキャラクターだけでなく、奇想天外な話も魅力だったのでした。何が飛び出すかわからないです。


素朴な王弁と僕僕の関係には、やっぱり憧れがありますね。もっとも、僕僕先生への甘酸っぱい気持ちとか、エロい思考を読みとられて恥ずかしい思いをした挙句「発情期」呼ばわりされる王弁になりたいわけじゃないけど。
……と言いつつ、一巻のときに思いましたが、この絡め取られているような状況が心地よい部分もあるわけで。開き直りともいいますか。転がされているのも、また一興なりですよ。う〜ん、これは岡目八目だからかな。
まあなんにせよ、王弁の素直さはある意味ひどい。素直なことは美徳ですが、他人の情事を覗き見ようと興奮したり怒られているのに僕僕に惚れ直したり心を読まれても快感だったり、素直が行き過ぎて、だめだこいつな感も王弁には漂っていますね。
僕僕が問題解決に向けて取り出した筆を見てなにかに気づくのですが、「はっ、まさか……男女の営みに使う特別な用法でもあるとか」には思わず爆笑。どれだけピンク色な思考で染まっているんですかい。
記憶を失った兄と弟を描いた話での、変わった性癖の下りにも思わずつっこみたくなりました。素朴な興味の対象が、激しく間違っていると思います。エッチなのはいけないと思います


二人の関係は近づいているようで、いまだに付かず離れずな距離なようでもあり。いじらしいな〜まったく。「盗む、か。うん、いいんじゃないか。悪くない願いだ」にはドキッとしました。これは、大切なものを盗んでいきましたフラグなのでしょうか。
また、人生哲学みたいな含蓄あるセリフを、王弁にからかい気味に投げつける部分が大好きです。王弁への言葉なんだけど、なんか自分も楽になれる心持がするのですよ。
とても穏やかな気持ちで読み終わることができます。面白いというか……うん、あれだ。愉快だ愉快。本当に愉快なときを過ごすことができましたよ。