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三雲岳斗M.G.H.―楽園の鏡像 (徳間デュアル文庫)徳間書店,2006   類似検索


第一回日本SF新人賞受賞作。宇宙ステーションで起きた奇妙な出来事の謎を解くという、SFとミステリを組み合わせたハイブリッドな作品。
クールな主人公・凌と好奇心旺盛なヒロイン・舞衣のやりとりが、最初の宇宙旅行への誘い方などからして犀川先生と萌絵ちゃんを彷彿とさせてくれます。四季博士(『すべてはFになる』)みたいな人物・朱鷺任博士もいましたした。いや、どちらかいうと立ち位置的に天王寺博士(『笑わない数学者』)のほうが近いかな。博士と凌のコンピュータを介したやりとりや、対面したときの態度などがです。これらの登場人物や章題のつけかたから、やはりS&Mシリーズに近い雰囲気を感じ取れます。
もちろん、本書の一番の魅力は「無重力状態の宇宙ステーションで、墜落死」にあるでしょう。SFとの組み合わせによって、従来のミステリでは出てこなかった、無重力空間での墜落死という魅力的な謎が提示されているのですから。「どうして宇宙でこんなことが起きたのか?」という思考方法が素敵です。そうそう、懐かしい物理の公式なんかも出てましたよ。


③ 紫骸城事件 Amazon② 笑わない数学者 Amazon① 旧宮殿にて Amazon
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上遠野浩平さんの『紫骸城事件 (講談社ノベルス)』秘密の魔法大会で突如現れた奇妙な死体の話。