海底密室

海底密室  Amazon
ミステリ5SF3シリアス2
三雲岳斗海底密室 (徳間デュアル文庫)徳間書店,2000
三雲岳斗さんの作品感想


記者である遊と情報デバイスに宿る仮想人格・御堂が、取材のために訪れた海底の実験室バブルで起きた事件に挑みます。
序章の表現でちょっと混乱するな〜と思っていたら、人工知能が関わってきてたのか。人工知能不眠症の組み合わせだけで、理系っぽさがバリバリするのは私だけでしょうか。
もちろん他にも様々な専門用語も飛び出しており、雰囲気に一役かっています。逆正弦法則の存在を知って驚いたりもしました。


一ヶ月前に起きた事件の謎も解けないうちに、謎は増えていくばかりでなかなか前に進みません。
深海で生活しているという部分も大きく関わってきますからね。環境が特殊なだけに、思考の幅も広がって大変なんでしょう。異常な状況が異常な密室を作り上げる要因となる可能性も孕んでいる訳で。
海の中で暮らしているのに、水があって濡れちゃうから通れないなんて」とか印象的だったんですが、異常な環境+不思議な人間関係など、奇妙な違和感は物語を読んでいる間ずっと付きまとってきましたよ。


孤独という概念についての緋紗子女史との会話など、海底という物理的な暗闇だけではなく、深海の様に深い心の闇にも踏み込んでいきます。
解説でも触れられていましたが、犯人の動機もこの物語の核でありましょう。おまじないって単語にここまでぞっとするとは……。なんでしょうね、普通の状況だったらなんでもないのに、海の真ん中で足をつっちゃったみたいなこの感触は。


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