博士の愛した数式

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癒し⑩
小川洋子博士の愛した数式 (新潮文庫)』新潮社,2005


第一回本屋大賞・大賞受賞作。八十分しか記憶が持たない数学の博士と、彼に仕える家政婦とその息子を巡る話。
どんなときでも数字にまつわる話をする博士の影響を受けて、数学なんて興味がなかった家政婦が徐々に数式の魔力に囚われていく様子も楽しいし、息子が登場してからはさらに楽しかった。


八十分しか記憶が残らないとか、最初を読んだときには随分と感動的な予感がしていましたが、涙がドバドバでることはありませんでした。
でも、すごく穏やかでいい物語でした。数学とかあまり得意なほうではありませんでしたが、この本を読むと数学がとても面白そうに思えてきましたね。数字の一つ一つが、なんだかかわいらしく見えてきましたよ。


八十分間どんなに素敵な体験をしても、結局は「=0」となり記憶がリセットされてしまう博士。じゃあ、博士はいてもいなくても一緒かといえば、そんなことはありませんでした。確実に家政婦や息子に影響を与えているわけで。
0だってりっぱに存在する数字の一つなんだから、当たり前か。オイラーの公式だって「すべては0に抱き留められる」んでしたっけ。
0って無のイメージしかなかったけど、ものすごく重要な役割も果たすんですね。0はすべての数字の始まりの数でもありますし。
そんな些細ではありますが、素敵なことに気づかされる物語でした。だからどうしたとも思えますが、気づくことで「0」一つ分くらいは世界が広がったように思えます。


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