スロウハイツの神様㊦

スロウハイツの神様㊦  Amazon
癒し⑥泣ける③恋愛①
辻村深月スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)講談社,2007


クリエイターばかりが集まった家での生活と終焉を描いた作品の下巻。まるでぱくったように話を展開するコーキの作風に似た作者の謎や、コーキの作品をも凌ぐ『ダークウェル』の作者の謎、これまで張られていた伏線が明かされていきます。


強く生きることを義務にしている環、優しい世界しか描けない狩野、作品に感情を入れることができない正義、恋愛のせいで絵に打ち込めずにいるすみれ、冷徹に計算を働かせる黒木、人生になにもないのに物語を書けてしまうコーキ。
それぞれが、抱える問題と正面からぶつかり生き方を決めていきます。そんな結果の共同作業は、もうなんかうれしかった。
また、最終章で神様の存在が明かされます。上巻では神様じゃなくて天使じゃないのかと思っていましたけどね。辻村さんって本当にドラえもんあるいは手塚さんが好きなんだな〜。……そうそう、「画質はハイパーきれい」には笑いました。


辻村さん自身は、住人の中で当てはめるとしたらどのタイプなのかな? 優等生的な狩野のような気もするし、全員をごっちゃに混ぜた感じなのかもと邪推。なんにせよ、この物語が素晴らしいことに変わりはありません。ただ、あまりにも物語の世界に浸ってしまう危険があるのでご用心。
思い返してみると、本を読んで楽しかったり面白かったではなく、うれしくなったのは久しぶりかも。


辻村深月さんの作品感想