野望は暗闇の奥で

野望は暗闇の奥で 「卵王子」カイルロッドの苦難5   Amazon
ファンタジー5燃える3癒し2
冴木忍野望は暗闇の奥で (富士見ファンタジア文庫―「卵王子」カイルロッドの苦難)富士見書房,1993
シリーズ感想
冴木忍さんの作品感想
頼りのイルダーナフと別れ、カイルロッドとミランシャの二人で旅を続けるシリーズ5巻目。イルダーナフと自分との違いをカイルロッド本人にしゃべらせていることで、彼の喪失感がより一層引き立てられていますね〜。
特に遺跡を研究している男や賞金稼ぎとの出会いを通して、誰を信用したらいいのか分からないと悩むところとか。この部分は基本だけども、極めて重要な判断ですから。これまでイルダーナフに任せていたからよかったけれども、私もカイルロッドもかなり疑心暗鬼に駆られます。


それにしても、イルダーナフの立ち位置がさっぱり分からない。5巻まで来たのだから、少しぐらい秘密が明かされてもよさそうなのに、むしろ不穏な要素が増えるばかりです。エル・トパックとイルダーナフの会話なんて、何かを匂わせているけれども、その何かが分からなくてむずむずします。
謎が解明されずモヤモヤしますが、思いも寄らないところで、予想外のキャラが再登場な展開もあって飽きません。イルダーナフの代わりに旅に加わったグリュウにもびっくり。まさかこいつがって感じで、引き込まれますよ。


不気味と言う点では、霧に包まれた魅力的な街の話がダントツ。ホラーのような冷気が漂ってさえいましたよ。そしてこの話を読み終わっての、気持ちの持って行き場がないです。
基本コミカル思考ですが、展開はシリアスな方向なんですよね。カイルロッドにそっくりな黄金像イルダーナフの意味深な発言など、宿敵には近づきましたがまだまだひと波乱ありそうです。