巻末にはラフイラストもついとりますよファンタジーxヒート


冲方丁カオス レギオン02 魔天行進篇 (富士見ファンタジア文庫)富士見書房,2003


一人でも軍団なジークと従者のノヴィア、妖精のアリスハートの活躍を描くシリーズ四巻目。一巻目以来の長編です。短編で進んでいく前巻と前々巻もそうでしたが、長編だとさらに濃厚な味わいを持った作品になっていました。ファンタジーはあまり手が伸びなかったのですが、やはりこのシリーズは読んでいて正解でした。
今回の内容はシンプルで、故郷を求める二万人もの民衆をジークたちが引っ張っていく、それだけといえばそれだけのお話。言葉にするのは簡単ですがそう単純にはいかず、ただでさえ困難な道のりを待ち構えるのは、罠に罠に、さらに罠の連続。前回、領主の息子として登場したレオニスや彼を陰から支えるトールも絡んできますし、元従者の話などジークの過去にもいくつか迫ります。
冲方式ストーリー創作塾』(→感想)を読んで、冲方さん自身がどのようにプロットを作成したのか知っていたためか、構成にほれぼれしてしいます。記憶が薄れているとはいえ、この巻のプロットを読んでいたので、ある程度の展開は分かっていたのですが、それでつまらなくなるなんてことはありませんでした。
新たな土地を求めて歩き出す、領主やその息子、騎士に司祭の葛藤や苦悩。そして、歩き続ける二万人、彼らの成長も今回の魅力です。ただ歩くだけの行為に、いかに感動させられることか。もちろん、ノヴィアちゃんやレオニス、トールたちの成長も負けてはいません。とくにノヴィアちゃんの最後の活躍はよかった。シリーズとして読んでも、徐々に難しい試練に耐えられるようになっていくノヴィアちゃんの成長過程がすばらしい。ジークの超人っぷりというか狸っぷりも健在だし、アリスハートも地味にいいとこ取り。もうどの人物も魅力的でたまらない。四百ページを一気に堪能させてもらいましたよ。

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