ジークが今回戦う相手の中で、大蜘蛛が一番人間っぽく感じたのは気のせいだろうか〜ヒートxファンタジー


冲方丁カオス レギオン03 夢幻彷徨篇 (富士見ファンタジア文庫)富士見書房,2004


友人であったドラクロワを追うジークたちの物語も五巻目。今回は、ジークも従者のノヴィアも記憶を失ってしまうという長編です。というか、前巻以上に分厚さ。ついついのめりこんでしまうような物語が、前巻同様しかし違った切り口で展開されています。こういう話があるから正統派ファンタジーもあなどれないですよね。
当面のジークの敵となる相手が、彫刻家や医者、調香師の刺客を放つところから物語は始まります。もちろん、ジークを相手取る刺客だけあって一癖も二癖もある連中ですが。この刺客を始め、キャラたちがみな引き付けるなにかを持っているんですよね〜。妖精であるアリスハートや影で仕えているトールも、互いの会話の中で魅力を見せてくれるます。敵が成長するってのもなかなか新鮮で面白い。がんばり屋のノヴィアちゃんは相変わらず真面目にがんばってくれています。真面目なだけあって悩みやすくもありますがね。でもその部分が読みたいと思っちゃう。
記憶を段々と失ってしまうので、残された記憶を元に現状を推理するなどちょいとミステリアスな流れもあります。また、ジークが、そして敵も過去の真実と相対する場面もあります。過去の話なのである程度結末が定まっているとはいえ、だからといって真実の辛さがやわらぐこともありませんでした。さらには、「全てを疑え」なんていう熱いノリもあり、もう見所満載でしょう。これだけでも十分物語として完成していると思うのに、これがシリーズの一部ってんだからすごいです。
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