アイドルの話にノックアウトさせられましたコミカルxクライ


劇団ひとり陰日向に咲く幻冬舎,2006   著者検索類似検索


新聞の書評でも褒められてて、図書館に予約を入れたのが三月のこと。それからもう半年も経ってました。だもんで、いいという評判を忘れていたんですね。心の準備をして読まなかったせいか、読んでる最中に思いっきりやられた。面白すぎるよ劇団ひとりさん! 短編五編が収録されており、微妙につながっているので連作短編形式かな。
道草」ホームレスを夢みるサラリーマンの話。ホームレスが次々野球に例えて上手いこと言い出すところは思わず笑ってしまった。最後のオチにはニヤニヤ。「拝啓、僕のアイドル様」ミャーコというアイドルの追っかけをしている男の話。このオタクの妄想は読んでて飽きません。この話に限りませんが、前の話の登場人物たちも出てきますよ。そして、結末には参ったの一言。この話がやばいとは聞いていたのですが、先ほど言ったように記憶から消えかけていたので、不意打ちを食らう格好に。この男の心情も思うと切なすぎます。「ピンボケな私」ノリでカメラマンになると言い出した女の話。メモリースティックに紙やすりなんてどんな組み合わせやねん。前の話で動揺しっぱなしの心を落ち着かせてくれた話でした。
Overrun」借金だらけになり、犯罪に手を染めようとするギャンブラーの話。多重債務者だけが味わえる喜びは気になるけど味わいたくはないよな、やっぱり。ノリで犯罪に手を染めていく過程も楽しませてくれました。オチは予想できたけど、関係無しにこういうのに弱い私がここにいます。「鳴き砂を歩く犬」くだらないことしか言えない芸人と出合った少女の話。芸人さんが出てくるので、劇団ひとりさんの実体験がどこまで関わっているのか気になりますよ。
ショートショートのようなオチを生かしつつ、もちろんオチに至るまでの過程も見事です。テンポのよい文章はページを繰る手を、止めさせてくれません。爆笑するというよりは、「おいおい」と心の中で声をかけながら苦笑する感じ。ストーリー重視の私だからか、この本は見事にツボに入りましたよ。


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