こんな守護神が私の大学にもいればな〜ヒールxコミカル


森絵都風に舞いあがるビニールシート文藝春秋,2006   類似検索


直木賞受賞作。六つの短編が収められています。「器を探して」恋人との時間を犠牲にしてでも、自分の信じた「ヒロミのケーキ」の普及に力を注ぐ女・弥生の話。自分を振り回すヒロミをサポートし続けるなど、彼女のケーキにかける思いはすごい。一体どんな風に決着をつけるのかドキドキしていて、器を探しに行ったときはそうだよなー、でもそんな〜と思いましたが、最後は弥生ちゃんにニヤリとさせられちゃいましたよ。「犬の散歩」夜のお店で働きながら犬の世話をする話。あるいは牛丼の謎を追う話^^牛丼は、私にとっての本ってことでしょう。扱うテーマは重いけど、たくましくポジティブな主人公なので暗くなりすぎません。「犬が喜ぶもんか。金で喜ぶのは人間だけだ」とか言っちゃう浜尻さんも素敵です。
守護神」困ったときの神・ニシナミユキと主人公の攻防戦を描いた話。貴子潤一郎さんの「さよならアーカイブ」(→感想)とか、こういう学校生活に関する話は設定でもうやられちゃいますよ。なおかつ二人のやりとりが絶妙で言うこと無し。「鐘の音」仏像修復に関わる話。仏像の修復過程も興味深いのですが、語られる過去で狂気を感じて最後には驚愕し、その後は温かな気持ちになれました。Sweet Blue Age Amazon眠り姫 Amazon
ジェネレーションX」主人公・健一と石津という二人の男が、クレームがでたお客様のところへ謝りに行く話。全て車中の話なのですが、話す電話の内容から段々と石津について詳しくなっていく様子がうまい。バカでみんないいやつだ。一番楽しく読めました。「風に舞いあがるビニールシートUNHCRという国際機関で働くエドと里佳の関係を描いた話。あの潜水艦乗りの恋話(→感想)を思い出しました。危険な地域を飛び回るエドを心配する里佳の心情は読んでて辛いです。「じゃあ、私たちのビニールシートは? 誰が支えてくれるの?」という叫びもあれだけど、幸福に包まれた瞬間も残酷すぎるよ。
やはりコミカル好きとしては「器」「守護神」「X」が好きだけど、どの話も読ませてくれます。六つの話が緩→急→緩→……の順番で構成されているので、気分も新たに違った切り口の話を読めますしね。軽妙な会話の応酬やくすりとするオチなどもありおすすめの本です。