池上永一シャングリ・ラ角川書店,2005 Amazon


ラノベの文庫になれてた私にはかなりの量でした。でも、徹夜してでも読み進めたくなりました。実際、昨日(今日)は朝の6時に寝たわけですし。
新しい経済・政治に変わってきた近未来の日本を舞台に、政府とゲリラの対立を描くSF大作です。といっても、SFの枠に収まらないのかも。SFの定義がよくわかってませんが(汗)
登場キャラクターが個性的なのがずらり。しかも、みんな執念深いし。終盤、何度危機に陥ってもなかなか死にません。人間の泥臭さがつまってます。味方も敵も「しぶとい」とかそういう言葉を大きく上回ってますね^^「その生命力は人間を超越してるだろ!」と突っ込む心がある一方(人間じゃないのもいますし)現実よりもこの小説の中のキャラクターのほうが人間味があるようみ思ってしまうのは何でかしらん。
政府対ゲリラといっても、クライマックスまでは大規模な戦闘は行われないので個人が大活躍するのですよ。序盤は謎ばかりでまったく全貌が分かりませんしね。始めは、ニューハーフの活躍に見とれているうちに過ぎてしまいます。謎の伏線とかも吹っ飛ばしてしまうほどの力を持ってるのです。モモコもミーコもキャラ濃すぎです。
中盤に戦争が行われますが、暴力による戦争ではなく経済戦争です。詳しくは把握しきれなかったのが残念ですが、かっこいいし面白い。リスキーなかけにでる若き投資家達が輝いて見えます。また、この辺りから敵方だと思っていた登場人物たちの心理描写にも共感し始めてしまったので、正義とか悪の基準が曖昧になってくるように思いました。
銀とはなんなのか? という疑問を抱きつつもページをめくると、徐々に最強キャラ同士の対戦が始まってきます。なんかシードの種割れみたいな感じに次々と覚醒し始めるのです。終盤になるともう全員を応援したくなります。主人公達はもちろん、主役級も脇役も黒幕さえも。一癖も二癖もある人物が集い始めると、もう物語は超特急で進んでいくばかりです。謎が明らかになるころには、ストーリーよりも登場人物の魅力のほうが強くなっちゃうくらいです。
シリアスになる終盤でも笑いがあるので、読みやすいのですよ。600ページ近くと分厚いですが。……ああ、銀英伝が読みたくなってきた。
この小説が好みだった人へ、私がお勧めする三冊の本。
③ 死都日本② デュラララ×②① ゲームの達人 上
①ひと一人の人生以上のものを描ききった作品。シドニィシェルダンの『ゲームの達人』こちらは上下構成で、親から子へと物語は続いていきます。マネーゲームでもあります。
②さまざまな人物がぶつかり合う群像劇。成田良悟さんの『デュラララ』シリーズなので巻を追ってくとさらに面白くなるかと。(画像は二巻)
③自然の驚異を書いた大作。石黒耀さんの『死都日本』こちらはキャラの力より、火山の描写がすばらしいです。