ミミズクと夜の王

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紅玉いづきミミズクと夜の王 (電撃文庫)メディアワークス,2007


第13回電撃小説大賞・大賞受賞作。魔物に食われたいと願い森に入り込んだ少女・ミミズクと魔物の王様・フクロウの話。
死にたがりで感覚が普通とはずれているミミズクと、フクロウやクロなど魔物との会話がいいですね。フクロウはミミズクのことを目障りだといいつつも、食べはしないところが妙に面白い。言葉はぶっきらぼうなフクロウも、異形なクロも憎めないやつらだ。
魔物の優しさは、特にミミズクの凄惨たる過去を知ると際立ちますね。ミミズク自身は、人間とは思えない生活を送らされる中で考えることを放棄しており、自分の辛さを十分には理解していないけれどもさ。


序盤を読んでるだけで先の話が想像できる王道ストーリーなので、話の途中で先に待ち受ける困難が頭の中で形を成してしまい、うるっときてしまいました。頭の中で話を作ってしまうなんて本読みとしては邪道かもしれませんが、ここまで直球のストーリーを放り投げられたら、軌道が読めてしまい、見逃すわけにはいかんのですよ。
聖騎士のデュークとオリエッタ夫妻、人の国の国王と王子、あるいは魔物。徹底的な悪役がいないのもいじらしい。
そんな中、ミミズクが心の中でつぶやいた(たくさん、わかるって、哀しい)が印象的。どんな言葉でも表しきれない素敵なものをミミズクは既に持っていたけど、人と接し学んで知識を吸収したからこそ最後の結末があったんだと思います。


第五章「やさしい忘却」辺りからはもうページをめくる手が止まらなかった。どんな困難が待ち受けているか想像できる、ってのと矛盾しているようだけど、先が気になって仕方なかった。
なんだろう、球の軌道は読めるからジャストミートはできるけど、ヒットになるかホームランになるかあるいは外野フライに終わるのか分からない、みたいな。
まあ、私の場合はこの直球の物語に対して空振り三振しちゃいましたよ。どんな球がくるのかわかっていても、涙を流してちゃ打てませんよね。ちゃんちゃん。


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