神さまのいない日曜日
入江君人『神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)』富士見書房,2010
入江君人さんの作品感想
神さまがいなくなり、人が死ぬことも生まれることもなくなった世界で、村人たちに愛されている墓守の少女・アイの物語。人食い玩具<ハンプニーハンバート>と出会うことから、物語は動き出します。
アイと村人との穏やかな交流から始まりますが、隠し事が臭わされていますし、ハンプニーとの出会い後は急展開していくわけで。
アイと同じく墓守のスカーと遭遇した際のやりとりやハンプニーの特性、そして復讐のためにハンプニーを追いかけてきたユリーとの会話など不思議な出来事、引っかかる描写もありますが最後に綺麗にまとめられています。
アイとハンプニーの絶妙にかみ合っていない会話の応酬や、パンツを突きつけての真面目な主張からの「使えな!!」発言など楽しい展開も多数。なによりアイの頑張り屋さんなところは、空回り含めて魅力的。
そんなコミカルな展開に身をゆだねていると、クライマックスまで誘導されている非常に無駄のない物語です。短いお話なのですが、ぎゅっと濃縮された素敵な童話に仕上がっています。断然無敵におすすめです。
とても面白かったですし、終盤はぐっときました。涙もおまけでつけちゃいます。下記の三冊でピンとくるものがあった人は、ぜひ手にとって欲しい。
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