ロウきゅーぶ!

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燃える4癒し3コミカル3 <ピックアップ5>
蒼山サグロウきゅーぶ! (電撃文庫)アスキーメディアワークス,2009
蒼山サグさんの作品感想


バスケの能力を買われ推薦で入学したものの、部長と11歳の娘との恋仲が発覚したことから、活動謹慎に追い込まれてしまい途方にくれる昴の話。そんな昴は、ひょんなことから小学校の女バスのコーチをすることになります。第15回電撃小説大賞・銀賞受賞作。
昴を待ち構えていた5人の態度には、私も思わずズッコけてしまいましたよ。「わかりました、お兄ちゃん」とか……もう誰かこの暴走を止めてやってください。たくしあげスパッツとかブルマとかどんだけー。


短い登場とはいえ、昴の友人・一成はいい奴、いやいいツンデレです。「このお寿司野郎が!」前後の会話は思わず笑ってしまいました。ちゃらけているようで、昴のことを真摯に考えてくれている美星も好感持てます。
そうそう、ライバルの男の子もいい性格してます。昴へ仕掛ける不幸には小学生らしさがにじみ出ていて面白かったし、逆にかっこいい口上を述べても聞かれてない部分とかは不憫だ。男の子超がんばれ。


そんなわけで、はじけた性格のヒロインの5人を筆頭に尖がったキャラが多数登場しますが、そこだけが本書の魅力というわけではありません。むしろ、スポ根モードに入ってからが真骨頂。
女の子たちは体力面、精神面でそれぞれに部分があって、それを軸に物語は展開していきます。小学生ってことが色々と面白く作用しているな〜。中・高校生に比べて、小学生にスポット当ててるのは少ないと思いますし。
同様に、彼女たちを見ている昴の心が徐々に変化していくところも見所。
深く考えずになりゆきで受けた仕事だったけれども、急にコーチを頼んだ背景などを知ってしまい悩む昴の姿には、ページを繰る手が止まりませんでしたね。唯一のバスケ経験者・智花の心の奥にある気持ちに気づいての、「俺が、両方守ってやる」には痺れました。こういうセリフ、私も一度は言ってみたいものです。


全員が一つの目標に向かって、最善を尽くそうとしている姿はやはり燃えますね〜。チーム内のそれぞれの個性や関係も見えてきてすごくよかったです。そして、秘策が期待以上のものだったので、さらに楽しかったですね。特にポジションの発想はなかったわー。
最後の試合、ラストに交換日記を持ってきた辺りではガツンとやられました。野球漫画なんかで、まるで時間が止まったかのように、スローモーションで描かれることあるけど、それが小説でも起きていた感じ。絵が浮かんできましたよ。ここ最高でした。
昴の過去にもまだ何かありそうだし、続きを期待してもいいのかな。


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