アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還

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川原礫アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)アスキーメディアワークス,2009
川原礫さんの作品感想


ずんぐりむっくりな体型でいじめられっ子の中学生・ハルユキの物語。副生徒会長であり美貌の持ち主の先輩・黒雪姫と出会い、「もっと先へ……《加速》したくはないか、少年」というミステリアスな誘い文句と共に物語は動き出します。第15回電撃小説大賞・大賞受賞作。


仮想の世界だけでなく、現実の世界にも影響を与える強力なゲーム「ブレイン・バースト」を巡る話になっていきます。格闘ゲームのような趣のあるゲームなのですが、謎の部分も多いわけで。
なんにせよ、どうにも最初はこのハルユキのキャラが受け入れられなかったなー。アバターという仮想現実のキャラクターを使ったゲームにのめりこみ、自分の世界に引きこもってるのはともかく、幼馴染のチユリの好意を自分の勝手な解釈で無駄にするとかあり得ない。
運動や勉強がダメだろうが、こういう幼馴染がいるだけで勝ち組だと思うんだけど、その幸福に気づいていないハルユキは本当にかわいそうだ。


先輩に導かれて誘われたときでさえも、「あなたのかけてくれた……じ、慈悲に、ちゃんと報いたい」など、なんか卑下しすぎているのが妙に引っかかったのですよ。あまりにも自信がなさ過ぎ。
でも、先輩が親愛の情も込めてハルユキをからかってる部分はよかったですよー。ハルユキのひねくれてない、素の反応が見れてる感じがして気持ちよかったです。


そうそう、チユリを押し倒すシーンも思わずホホが緩みましたね。中学生のくせにベットの上で繋がったときの体勢にはもう……じゃなくて、「自分もチユリを抱きしめたらどうなるか」辺りが気に入りました。
ちょいと打算的な思考入ってるけど、こういうのなら受け入れられます。この感情になら、中学生が戸惑ってもいいと思うんですよ。その後の、「仮想的知識してしか知らぬ行為」をいたしてしまうとことか、こういう卑下具合ならちょっと距離が近くなった感じがしました。
また、購買部で購入してきたコードを持ってる姿など、先輩もチユリに負けじとかわいらしい一面を見せてくれます。いいないいな〜。完成されているようでいて、まだまだ未成熟で脆そうな部分を見せてくれるのがたまらないですな。……精神的な話ですよ?


ゲーム世界の謎うんぬんよりも、ハルユキの行動を見守ってるのが面白かったですね〜。次巻からはどんどん世界観が明かされていくのかな。もっともっとハルユキには悩んで苦しんで成長してもらいたいのですよ。
あと、触れないわけにはいかないんだけど、あとがきは都市シリーズなどを書かれている川上さんが書いています。この暴走具合がすさまじいです。ぶっ飛んでる割には、こう語りかけられる口調を読んでいると不思議な説得力があります。いや、説得力があっちゃイケナイ話なんだけど。カワカミ汁はないわー。


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