みすてぃっく・あい

みすてぃっく・あい  Amazon
シリアス4癒し4萌え2
一柳凪みすてぃっく・あい(ガガガ文庫 い 3-1)小学館,2007
一柳凪さんの作品感想


直線でさえ迷ってしまうんじゃないか……となにやら不気味な書き出しで描かれるリリカルミステリ。ひらがなのタイトルの表すように丸っこい印象。deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。
冬休みの女子寮が舞台なのですが、法の書を耳元でささやいて後輩を起こす先輩の三輪や外見も性格も子供にしか見えないせりか、ワンテンポ遅れて生活している部長の沖本と主人公・蝶子の美術部員の四名だけ。百合っぽい雰囲気が充満してるのです。


蝶子も他の三人に比べるとまともそうに見えて、意外にひっかかる部分も多いです。他の三人のように突き抜けているわけじゃないけれども、どこかいびつな感じ。
数を数えていると不安が軽くなるだとか、柘榴の話のように物の名前に敏感なことなど、誰でも多少は感じるであろうことが強調されているような。それが暗い未来を暗示しているようで、なんか動揺しちゃうんですよね。


そんなわけで、どことなく閉鎖的で寂しい雰囲気ではあるのですけれども、全体的には少女四人がわっふるわっふるしてて楽しいな。
蝶子の幼なじみでもあるせりかの体当たりのラブ表現は戸惑うくらい素直だし、ちょっとやらしい三輪先輩はどこまで本気か掴めなくて気になる存在。部長も、急いでるせりかや三輪先輩とは逆にのんびりでいいスパイスです。
選択するのが苦手で決定的な行動が取れず戸惑うばかりの蝶子ももちろんラブリー。
一番の三輪先輩がお気に入りだったのですが、せりかの「だ……て、柘榴、食べさ……てくれるって、ゆったじゃん……」に撃ち殺されました。このセリフは卑怯じゃよ〜。


なんか暗喩的な表現も多くて、考えさせられる話でした。「虚数の庭」という本が絡んできてミステリアスな状況になり、ちゃんと原因も説明されていて驚いた。雪の幻想的な風景だけじゃなく、ストーリー的にも満足。
ほんと「現実の私」ってなんなんでしょうね。考え出すと切りないです。神様が「i(虚数)」と一緒に「I(私)」も隠してしまったから、もう見つけることはできないのかな。この世界には「愛」も探し出すのは困難かも。あとはもう萌えしかない。……ってこれは二次元の世界か?


ちなみに、今日の日記に関して、このエントリ以外の感想は平行世界の私が書いたものです。この世界の皆様方においてはフィクションであり、文責はこの世界の私にありません。ご了承ください(1秒)


この小説が好きな人にお勧めする3
1 ピーターパン・エンドロール  Amazon2 ドリームノッカー―チョコの奇妙な文化祭  Amazon3 ボトルネック  Amazon
1、日日日さんの小説『ピーターパン・エンドロール』現実と虚構に曖昧な感覚しか持てない女の子と旅人さんのお話。→感想
2、御影さんの小説『ドリームノッカー―チョコの奇妙な文化祭』奇妙な出来事を巡る演劇部員のお話。→感想
3、米澤穂信さんの小説『ボトルネック』失望か絶望かの選択が存在するお話。→感想