君のための物語

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癒し6泣ける2コミカル2
水鏡希人『君のための物語 (電撃文庫)メディアワークス,2008


第14回電撃小説大賞・金賞受賞作品。
池に飛び込もうとしていた女性・セリアを助けようとして逆に落ちてしまった主人公・ヴィルヴェント、そして彼を助けた奇妙な男・レーイ。この三人が集まって動き出す数奇な運命を描いた物語です。
レーイが空気を読めないと言うかマイペースというかとがった性格の持ち主で、情熱をなくしてくたびれていたヴィルとのやりとりが落ち着いている上に面白いです。
レーイと知り合ったことでヴィルは、思い出の手鏡と櫛を捜し求める年配の女性・ミシェールを巡る話やすばらしい歌声で名声を得ているパレオロッタの話など、不思議な事件に関わっていきます。


ヴィルが若くないとはいえ、心の成長をはっきりと感じとることができてとても温かい気持ちになれました。凹んだりするものの明日への希望を取り戻したり、レーイとゆるい交友関係を築いて満足していたものの隣人のマーリーの一言に後押しされて一歩踏み出してみたり。
レーイも超然とした雰囲気をまとっていますが、ところどころ人間くささを残していてそこがいい。バカやりつつも信頼しあっている友情っていいなとしみじみ思いましたよ。


それにしても、第一章はひどい。最初にこの不意打ちはひどい。読んでる最中はすっかり忘れていたのだけれど、タイトル「セリュサの世界」がひどすぎるんですよ。
ぬはぁ!」とか叫びそうになりました。お茶をこぼしたり椅子から転がり落ちることはありませんでしたが、泣いちゃったじゃないですか。
会社に行く途中で読んでいたけれども、思わず電車を降りずにどこか旅に出たくなりましたね。ごとんごとんごとん。


水鏡希人さんの作品感想


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