出られない五人
蒼井上鷹『出られない五人―酩酊作家R・Hを巡るミステリー (ノン・ノベル)』祥伝社,2006
drunkershighさんの感想を読んで手に取りました。
多彩な才能を持っていた小説家・アール柱野と彼が入り浸っていた店「ざばずば」を偲んでのオフ会に、医者の田沼と看護士の幸、主催者の峰、どこか中性的な鵜飼、陽気な八角の計五人が参加します。
アール柱野はもちろんのこと、ざばずばに置いてあったお酒の入ったガシャポンなども絡んできます。ときどき出てくるアール柱野のエッセイが大変面白いです。エッセイ集を読んでみたくなる感じ。アールのエッセイに影響を受けるのも納得です。
表面的には楽しく夜を過ごしていたものの、身元不明の死体を発見するところから、事態は急展開します。死体発見に留まらず、五人それぞれが抱える秘密が段々と表面化してきたり、突然の闖入者が登場したりと、もうわけが分からない。
しかも、そんな楽しい状況に加えてシャッターが閉まっているために、外に出ることができないという素敵な環境。ガシャポンは大活躍するし、その人を食ったような設定がイカしてます。
五人が五人とも隠し事があって助けを求めたくない状況からの、どんでん返しや最後のオチにもニヤリ。なんだろう、色んなお酒をちゃんぽんで飲んで酔ってしまったような読了感。いい気持ちです。
この小説が好きな人にお勧めする③
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