螢坂
北森鴻『螢坂 (講談社文庫)』講談社,2007
drunkershighさんの感想を読んで手にとりました。アルコール度数が違うビールを四種類用意してあるバー《香菜里屋》を舞台にした日常の謎の物語。
写真を撮るために彼女を残し、中東へと旅立った男の記憶に残る蛍坂という場所にまつわる話「螢坂」タウン誌の発行者が猫が関わるちょっといい話を載せたことから始まる話「猫に恩返し」
立ち退きをしたくないという女性に関わる話「雪待人」大手の印刷会社を退職した男が作家を目指す話「双貌」記憶にある幻の焼酎を追い求める女性の話「孤拳」
気配り上手で、まるで人の心を読んだかの如く気分にあった素敵な料理を提供してくれるマスター・工藤が、登場する謎を解いてアドバイスしていきます。知識ネタに関する謎解きが多かったかな。
最初の螢坂が切ない話だったのですが、悪人役に肩入れをしたくなるような話や嫌な気分にさせつつも最後はほっこりさせてくれる話、メタミステリっぽく進み最後はいい感じに締められる話などバラエティ豊かなラインナップです。風味の異なる五種類の短編がここには用意されていますよ。
この小説が好きな人にお勧めする3
1、アンソロジー『推理小説年鑑 ザ・ベストミステリーズ2002』北森さんの作品も収録されています。→感想
2、北村薫さんの小説『冬のオペラ』名探偵・巫弓彦と記録者の姫宮あゆみの物語。
3、森谷明子さんの小説『れんげ野原のまんなかで』図書館を舞台にした日常の謎の物語。→感想