聖女の救済

聖女の救済  Amazon
ミステリ10
東野圭吾聖女の救済文芸春秋,2008
シリーズ感想
東野圭吾さんの作品感想


苦しさがぽろっと出てしまったような女性の言葉に、先の暗さを予感させられました。湯川先生が登場するシリーズの長編。毒殺された男を巡る、妻やその弟子そして草薙たちの話です。
内海の推理力を正直舐めていました。ドラマ版ではなく前に読んだ短編集で認識を改めていたものの、目の付け所の鋭さは想像を超えていましたよ。草薙もちゃらいだけじゃなくて、意外に根は実直そうな男ですし。
コーヒーメーカーの大きな欠点など、相変わらずな湯川先生のお茶目さもありました。また、「福山雅治」は大事なことなので2度書かれています。


探偵陣営が魅力的なだけに、低体温な文章で綴られており、やるせない感じが漂っているのが気にかかりました。といっても、つまらないわけではありません。文章も情緒溢れるものではないと感じられたんですが、読んでて飽きないんですよね。
そして、考えなければいけないことは、鉄壁のアリバイを崩す方法です。「献身」と似ており、物理的な視点より心理的な盲点をついてくるんですよね。逆転の発想から様々な謎は解明されていくわけで。


このトリックの結論を「虚数解」と名づけたことが肝かなと。湯川先生が推理した際にも納得できまし、イメージ的に把握もしやすいチョイス。
化石の話から消去法の話はなかなかよかったです。草薙が心理的に追い詰められていくのも、意地悪な心理ですが面白かった。トリックを追いかける話としては綺麗な終わり方だけれども、よくよく考えるとぞっとしますね。