みすてぃっく・あい

みすてぃっく・あい(ガガガ文庫 い 3-1)
百合の皮をかぶった幻想文学。あまりにも属性重視なキャラ設定に目が行きがちだが、本書の本質はそこにはない。個性的な登場人物はいわば隠れ蓑である。文学への挑戦状がここに隠されているのだ。
それがもっとも直接的に語られているのが、この事件に対する三輪の解釈を説明する場面だろう。「虚数の庭」という特殊な本の説明がされているわけであるが、誤解を恐れずに言えば、これはどの文学にも当てはまるものであろう。なにも「虚数の庭」に限った話ではない。
逆説的に、読者の認識的な世界に対して何も影響を与えられないようなものは、物語とは、書物とは、なにより文学とはいえないのである。
夢と書物の関連性についても述べられているのが興味深い。


文学は一つの世界の扉だと考えられないだろうか。
文学に触れるということは、無限の可能性という絶望の深遠であるこの世界から、生きていく道しるべを見つける行為と言えるのだ。