七姫物語 第2章

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高野和七姫物語(2) 世界のかたち (電撃文庫)メディアワークス,2004
高野和さんの作品感想


戦端を開いたお姫様の視点で描かれているとは思えない、何色にも染まっていないこの透明感は天下統一ではなく天下一品。
七人の姫が七つの都市を治めている東和という世界を舞台に、偽者の姫・空澄姫であるカラと彼女を担いだ武人のテンと口達者な参謀トエが、大嘘ついて野望を叶えようとする話。シリーズ二巻目。


四宮の琥珀姫に対してカラが行った最後の仕事は、どうしても寂寥感が沸いてきます。できればこんなことしたくないって気持ちがひしひしと伝わってきますから。
また、武力に秀でていそうな三宮の常磐や、双子の姉妹で姫である五宮と六宮など他都市の姫様も姿を現してきます。前巻カラたちが起こした動乱が原因で、七姫戦争が起こる火種は既に出来上がっているわけで一瞬触発な感じ。



戦と策謀の気配が漂い始めていますが、今回のカラはお祭りを楽しむことがメイン。お祭りの風景を楽しむカラは本当に自然体で、真相を知ってる私でも姫様とは思えません。……うん? 正当な姫様じゃないからあってるのかこの感想は。微妙なところです。
祭りを練り歩く大人形のとことかカラはからわかれていると本当にかわいくて、少女っぽく初々しい反応が堪んない。
でも、テンが斬り合いをしてまで欲しいと思った人材との邂逅場面、彼との受け答えは真摯で立派でした。やっぱりこのギャップも魅力なのかしらん。


芸術的な建物に感動していたカラにヒカゲが告げる真実とか、なんていうかこうちょっと間の抜けた笑いがちょくちょくあっていい。
カラとテン、トエそしてヒカゲの四人で黒胡椒を使った料理を食べる場面では、周りの状況を一瞬忘れてしまいました。テンのいたずらとか見てると、できれば避けたい嫌なことは全部放り投げてもいい気がします。放り投げようとすると四人の絆も捨てることになりそうで怖いのだけども。


最後は再びの彼女との対話で終わります。無言で交わした約束が少女らしくてほほえましいと思うのですが、カラたちは諦めることのないよう一生懸命努力するんだろうな。涙を流さないよう我慢したくらいだし。
ヒカゲとの会話の余韻も絶品。身分は横に置いといて、カラのように雪の中で強く泣いている少女がいたらぎゅっと抱きしめてあげたいです。ヒカゲにはカラをきちんと支えてもらいたいな。


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