狼と香辛料④

狼と香辛料④  Amazon
恋愛⑥燃える④
支倉凍砂狼と香辛料〈4〉 (電撃文庫)メディアワークス,2007


行商ファンタジーの四巻目。故郷へと向かう商人ロレンスと賢狼ホロが、手がかりを求めて訪れた村の存続に関わる騒動に巻き込まれます。
村長を始め、さすらいの乙女醸造師や教会を治めているエルサ、粉引きの少年などが登場します。教会がらみの話とか村と町とのやりとりとかが今回のメイン。毎回違った困難に陥ることで世界観が見えてくるのもいいですね。


前巻の決闘を経て微妙に変わってきたロレンスとホロの関係も見所。他の熱々カップルを観察することで、二人の関係が客観的に見えてくるのも楽しい流れです。ロレンスの、カップルがうらやましい発言をした辺りのホロの反応は必見です。
また、膝枕の強要とか「ぬしさえ帰ってきてくれさえすれば……」とか分かってて不意をつくホロの攻撃が、ちょっと次元が違うもののもうバカップルのやりとりにしか見えませんよ。ニヤニヤ。そのことに自覚的である発言があるのもいいな〜。
それにしても、二人の仲も進展したもんだ。困難への対処法などを見ても、これまでとはずいぶん違うと思う。今回ぶち当たる問題に対してのロレンスの対処も、珍しく大人の貫禄にあふれており冷静です。多分、信頼しているホロが離れることなくずっと傍にいたからなんでしょうね。二人が一緒にいる限り、安心してみていられます。


向かってからどうするんだ、という核心に迫る質問をできたことも、二人の関係が一歩近づいた証なんだろうな。ちょっかいをかけつつ探りあってる時期では、怖くてとてもできない質問ですし。この巻でようやくはっきりと絆が見えたように思いましたよ。
このこそばゆい関係を続けて欲しい気もするけど、そんなわけにもいかないでしょうね。心の距離が近づく間に、ホロの故郷へも近づいていますから。二人ともがむしゃらさのない大人であることが、安心要素であり心配要素でもあります。先延ばしにしてある結論がいつどんな風にでるのかなど、穏やかながらも続きが気になりますね〜。


支倉凍砂さんの作品感想