この引きからすると次回も期待できそうだ〜ヒートxラブ


有川浩図書館内乱メディアワークス,2006


検閲から本を守るために戦う図書隊の活躍を描いたシリーズ二作目。前作に続き徒花スクモさんのかっこいいイラストが目印です。今回は内乱ということで、図書館の人事に関連した図書隊内部の派閥争いなども明るみに出てきますよ。知る権利とプライバシーの問題を討論するところとか結構好きですし、批評に関しての是非を問う話も興味深かったです。
さて始まりは、職場見学に来た自分の両親に、戦闘職に就いていることを隠し通そうとする笠原の話。過保護で周りのことを見ていない母親に対する反発と、女の子なんだからという両親の願いの間で揺れる笠原の葛藤が肝です。今までだったら葛藤さえしなかったかもしれないことを思うと、笠原もちょっとは進歩しているんでしょうね。割り切れない部分があることを理解してきているし。もっとも、いくら変わったといっても根っこは笠原のままですけどね。父親はセオリー通りとはいえ、最後の演出が憎かった。
そんな愛すべき笠原が精神的に攻撃をかけられるところは辛いな。まあ、ベタ甘な会話が聞けたからよしとしましょう。そうそう、ベタ甘の恋愛話といえば、コラボ作品『レインツリーの国』(→感想)とのリンクも確認できました。猪突猛進気味の笠原や堂上とは違い、どちらかいうと傍観者タイプの小牧や柴崎にも、たっぷりと恋愛方面においてスポットが当たっています。
柴崎と笠原の関係とかもストレートに素敵ですよ、まったく。それに、笠原の同僚でありエリートの手塚にも、家族関係で何やら匂わせるものが出てきて大忙し。基本背景の説明がいらないから、その分たっぷり人物たちが描かれていてとても満足です。文句なしに面白かった。
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