脱力系ミステリ?ミステリxコミカル


倉知淳猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)講談社,2005   著者検索類似検索


中年なのに高校生くらいに見える探偵役の猫丸先輩が活躍するシリーズ。講談社ノベルスとしては二冊目。一冊目を読んでないけど、問題はないです。唐沢なをきさんのイラストも超かわいい。この手のイラストには弱いのです。同シリーズのアルバイト探偵ノートでも思ったけど、謎自体はくだらないもの(決して悪い意味じゃなく)が多いし暗くならないしで、表紙イラストが気に入ったかたならはずれないかと。長編は違うようですが。六作品が収録されています。
最初の話は、新鋭のイラストレーターさんのベランダに、ペットボトルが毎日置かれる謎の解明に行き詰まっていると、そこへふらっと猫丸先輩が訪れる「水のそとの何か」ダイイングメッセージの分類分けなんかも。これを読んだ瞬間に、あっ猫丸先輩の話だなと何となく思った。続いて、友人の事故現場を訪れると、何故かタクシーが次から次へとやって来る現場に遭遇する「とむらい自転車」三話目は、虐待されている猫を救うために猫泥棒を決行する高校生二人と猫丸先輩が偶然出会う「子ねこを救え」猫が絡む話は必然的に猫丸先輩の出番ですよね? 猫丸先輩がしゃべっていると、内容的には説教なのに説教っぽくないところが魅力の一つですなー。
四話目は、スイカ割りの準備をしたのに、用意しておいたスイカが何者かに割られている謎に猫丸先輩が挑戦する「な、なつのこ」こういうアホらしいシュチュエーションで起こる謎はやはり絶品。これは全編通していえることだけれども、「”悪意”が存在する可能性を排除して、この場を穏便に収めるため」の推理、と言う名の空論が楽しい。こう考えてみると、探偵の役割って必ずしも真相を暴くことだけじゃないのですね〜。五話目は、とある女子大生がある特技を持っていたのに、特技を生かすことなく戦場から逃げてしまった理由を探る「魚か肉か食い物」いじらしい彼女に乾杯っ! そして最後は、夜中のオフィスに電話が鳴り響き、それが段々と近づいてくる恐怖体験を味わう「夜の猫丸」書き下ろし作品であり、ホラーチックであり、この中では異色であります。
四話目と五話目はそれぞれ「ななつのこ」と「土か煙か食い物」のパロだろうから、他の作品も何かをもじったタイトルになっているのかな? 猫丸先輩独特なしゃべりによる奇天烈な発想の数々に、はっ倒されてみてはいかがでしょうか。メモをとってはいけません。その雄大な語り口に圧倒されましょう。


③ 僕と先輩のマジカル・ライフ Amazon② 春期限定いちごタルト事件 Amazon① 占い師はお昼寝中 Amazon
この小説が好きな人にお勧めする③
倉知淳さんの『占い師はお昼寝中』事件の依頼も解決も占い師に準じたミステリ作品。→感想
米澤穂信さんの小市民シリーズ。『春期限定いちごタルト事件』小市民を目指すのに謎に巻き込まれる作品。→感想
はやみねかおるさんの『僕と先輩のマジカル・ライフ』大学生が変な謎に巻き込まれる作品。→感想