ミステリxラブ


森谷明子れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)東京創元社,2005   著者検索類似検索


主人公の文子が勤める、わりと田舎で利用客も少ない図書館を舞台にした日常の謎話。五つの話が収められています。章題はすべて季語ですが、四話目だけ二十四節気には含まれていません。四話目だけ図書館を舞台にしていませんしね。
霜降」ゲーム感覚で図書館の閉館後にも残ろうとする小学生が多発。その上、カップラーメンが入ったギターケースの落し物などおかしな出来事が起こる話。謎そのものより、小学生たちの隠れ場所を見つける過程で描かれる図書館内部が面白かった。また次の話「冬至」では本に張られているラベルに関する話も出てきます。図書館内できれいに並べられていた本が、なぜか妙な順番に並べ替えられているのが今回の謎。本屋の本がおかしな並び方になっている話は読んだことありますが、図書館ってところがミソ。
立春」コピー機に置かれていた一枚の紙から、図書館の利用情報が内部から漏れている可能性に突き当たる話。図書館の防御力って意外に弱いな。ほんと善意によって成り立っているようなものです。
二月尽」有名な土地持ちで図書館の名前にもなっている秋葉家に招かれる話。きっぷのいい秋葉の旦那から語られる過去の怪談から展開します。この中では唯一図書館外の話ですが、逆にしばりがなくなったせいかこの話が一番うまいと思う。円紫さんと私シリーズのような味わいがありました。
清明」図書館に置かれていた一冊の古い本がきっかけとなり、過去を巡って文子の先輩に当たる能勢さんが今まで以上に暗躍する話。レンゲソウもひときわ咲き誇ります。文子と能勢さんとの絡みがあったり、新しい男が出てきたりしますよ。能勢さん視点で見た最後が、好きってわけではないけどいい感じ。意外に文子と能勢さんはいいコンビなのかも知れませんね。
私みたく毎週図書館に通ってる人間にとってみれば、気づこうともしないことばかりで驚きました。図書館に限らず、仕事ってやっている本人には当たり前でも、内情を知らない他の人から見たら謎に満ちているのかも。図書館が今までとちょっと違った場所に見えてきそうです。


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