読む前と読了後では、タイトルが違うもののように思えましたよヒールxモエ <ピックアップ2>


新井輝さよなら、いもうと。 (富士見ミステリー文庫)富士見書房,2006   類似検索


昨日に引き続き富士ミスの今月の初体験プロジェクト作品で、一冊で完結しています。交通事故で死んでしまった妹・トコが生き返るところ(そして、主人公であるヒロシがトコの裸体を目撃)から物語は始まります。このことをわりとアバウトに受け入れていきますが、トコのことは家族の中だけで閉じています。
家族以外のキャラクターもすてきです。ヒロシを励ますためにリハーサルまでする幼なじみのミノリちゃんがかわいいな。女の子に間違われるような顔立ちであり、ヒロシの悪友でもあるテツマルもいいやつです。調子のいいこといいつつ、何気に周りへと気を使っている彼にどれだけ救われることか。もちろん、テツマルの妹のユキちゃんも素直ないい子ですよ。
でも一番はやはり、ちんまいちんまいトコちゃんでしょうね。「なでなでして欲しいの」と言ったり、一緒の布団で寝たりなど、一度死んでしまっているからか積極的にお兄ちゃんへとアタックします。自分に向けられている妹の恋心を知っているなど、王道な設定からは微妙にズレていると思いました。泣きゲー的に読んじゃうと、最初の悲しみに暮れる場面が薄かったり、デート場面がスキップされるなど肝心な部分が透かされてる感じがします。泣かせる要素を持ってはいるものの、新井さんが書きたかったのはそういうものじゃないんでしょう。
最後はきれいな形できっちり締めているけど……まだまだ子供な私としては、「卑怯者ー」と叫びたい。まあ、母・シズヱが物を処分してしまうように、ヒロシも理由をつけることで自分の心に決着をつける。そんな術を学んだってことでしょうね。こうすることが、大人へと一歩近づく方法の一つなんだろうな。


③ いま、会いにゆきます Amazon② ルカ―楽園の囚われ人たち Amazon① ROOM NO.1301―おとなりさんはアーティスティック!? Amazon
この小説が好きな人にお勧めする③
①新井さんの『ROOM NO.1301』シリーズ。最初はエロに目がいきますが、次第に引き込まれます。→感想
七飯宏隆さんの『ルカ―楽園の囚われ人たち』人類最後の少女とその家族の話。→感想
③『いま、会いにゆきます スタンダード・エディション [DVD]』市川拓司さん原作の映画ですよ。→感想