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大森望,豊崎由美『文学賞メッタ斬り!』PARCO出版,2004
いわゆる批評本なんでしょうか。各文学賞を文字通りぶった切っています。2004年に出版されたものなので、最新情報というわけではありませんが、それでこの本の価値が下がるなんてことはないかと。
まず基本的な情報として驚いたのは、文学賞は重複受賞が事実上ないということです。考えてみれば、音楽とか映画の賞は一回限りなんてことはないのに、芥川賞二度目の受賞とかはありませんよね。どんなに偉大な作家さんでも。
芥川賞の選考会のうわさは面白かったです。もし事実だとしたら、そうとうな話ではあります。死ぬまで止めることのない選考委員の方々をこき下ろしていますが、なんとなく愛を感じましたよ、愛を。さすがに『白夜行』の選評はすごいと思いましたが。
それにしても、選評もすごい個性が現れるものなのですね。じっくりと選評を読む機会がなかったので、こんなに楽しい読み物を見逃していたなんて残念です。「文学賞の選評は、選考委員にキャラ萌えして味わ」いたいですね。
石田依良さんの書き方については、私も最近読んでいることもありなんとなく納得。話の転がし方が一流なのですよ。私もお気に入りの、西尾維新さんの『きみとぼくの壊れた世界』が褒められていたのもうれしかったです。
江戸川乱歩賞の受賞傾向とかメフィスト賞関連で「すべてがF」より「冷たい密室」が先だったなどの豆知識も充実してます。
銀林みのるさんの『鉄塔 武蔵野線』がものすごい気になります。新人賞応募時に絶対にやってはいけない、資料や著者近影つきのハンデを乗り越えさせるほどの読ませる力ってのが想像できません。
ちょっとしたコラムでは、海外文学賞事情に興味を惹かれました。翻訳物ってあんまり読んだことがなかったので、ここで薦められている何冊かは読んでみたいと思います。
大森さんや豊崎さんがコラム書いているエキサイトブックスはこちら。いろいろな本にまつわるコンテンツがありますよ〜。