著・ジャックリッチー,訳・好野理恵『クライム・マシン (晶文社ミステリ)晶文社,2005


ミステリの短編が十七編入っています。いや、ミステリの短編と言うよりショートショートみたいな雰囲気です。心理描写とかは少なくて、ストーリー展開のみを楽しめます。これがなかなかはまると心地よいのです。
最初は表題作クライム・マシン。ある暗殺者のところに、あなたの過去の殺人現場を目撃しました、と男が訪ねてくる話。展開に無駄がなくて、横道にそれることなく結末に至ります。面白いといいながら、にやりとできます。
余命四ヶ月と宣告された男の話「年はいくつだ」は王道の話ではあるけれど、導入部分が秀逸。その後、淡々と物語は進んでいきます。
再審査で釈放されるまで四年間牢屋に入れられていた男の話。「日当22セント」これこそ無駄のない文章によってのみできる話でしょう。私立探偵の活躍の無駄っぷりがすばらしい。
「殺人哲学者」「旅は道づれ」はショート話。「エミリーがいない」はどこに話が向かうのか分からない面白さがあります。アメリカ探偵作家クラブ最優秀短編賞受賞作品。
「罪のない町」は上記の「旅は道づれ」みたいな話でした。取り留めのない話のやりとりから真実を浮かび上がらせるというもの。登場するおばさんには「なにやってんの」と言いたくなります^^
「こんな日もあるさ」「縛り首の木」には同じ刑事が出てきます。そして先ほどの二つと同じように、推理している刑事は真相が分かってないとかいう面白い状況ができあがっています。事件は助手によって解決される(笑)ちなみに「縛り首の木」はホラーちっくな要素を含んでいます。怖くないですが〜。
「カーデュラ探偵社」「カーデュラ救助に行く」「カーデュラの逆襲」「カーデュラと鍵のかかった部屋」もシリーズ。
最初は主人公の探偵・カーデュラがロボットだと勘違いしてましたよ。「救助」は二日連続で同じ場所で同じひったくりに出会う話だったんですが、私も似たような状況の小説を書いたことがあったのでちょっとびっくり。もちろん、結末とはぜんぜん違います。それに、ひたっくりに会う女性まで二日とも一緒ですしね。やっぱり先人は偉大です。
読んだとき「逆襲」のオチは、ロボットだと思い込んでいたので分かりませんでした。何で勘違いしてたんだろう? 不思議です。
「救助」と「鍵」は特にお勧めですよ。
作者のことはぜんぜん知らなかったので、解説も読んでいて楽しかったです。


この小説が好みだった人へ、私がお勧めする③
③ 黒い仏② ふしぎな夢① 帰郷
ショートショート出身のミステリ作家。太田忠司さんの『帰郷 (幻冬舎ノベルス)ショートショート集ですが、その中の「雛の殺人」がお気に入りです。
ショートショートと言ったら、やっぱりこの人。星新一さんの『ふしぎな夢 (新潮文庫)』大学の本屋で今日も見かけました。
③探偵だけが分かってない。殊能将之さんの『黒い仏 (講談社文庫)』長編ですが探偵より助手が活躍する物語です。