村山由佳天使の梯子 Angel's Ladder集英社,2004 Amazon


村山さんのデビュー作『天使の卵―エンジェルス・エッグ (集英社文庫)』(Amazon)から十年後の話。実際にも十年経ってます。あのときの、絵描き(イラストレーターではなく画家)でもあった主人公・歩太ではなく彼より八歳年下の男・慎一が今回の主人公。彼が夏姫に恋することから物語は始まります。
以前の話では、夏姫と付き合っていた歩太が、夏姫の姉である春妃を好きになってしまう話でしたが、よく似ています。以前の歩太に似ている境遇の慎一を通して語られるので、同様の、しかし違った筋から眺めることができます。後日談というか、解決編というか。卵を読み終わったときに受けた悲劇性はありません。むしろ、それとどう向き合ってきあってきたか、どう決着をつけるのかがこの物語の焦点です。
こんな風に書いてますが最初はてっきり昔のまま、歩太の一人称だと思ってました(汗)
序盤、夏姫が振った男(名無し)について語る場面で本編とは関係のないのですが、胸が痛かったです。彼女が信販系の会社で働いていることもあって……。
終盤の慎一は歩太にお株を奪われていました。やっぱり昔の主役の方が強かったか(笑)なんにせよ、前作を読んだ方なら読まないと損だと思いますよ。