著:メアリー・シェリー 訳:森下弓子『フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))東京創元社,1984 Amazon


あの「うーうー」と唸る怪力の不気味な怪物・フランケンシュタインはよく知られていると思います。その原典である小説がこれです。
でも、私の中にあったイメージ(大多数がそうだと思います)は間違いだらけなんですよね。怪物は知能がないわけではなく言葉も習得しますし、決して意思の疎通ができない相手ではありません。
そもそも、フランケンシュタインは怪物を作った博士の名前なのです。怪物の名前はなく、作中では怪物と表記されるだけです。
中にあるタイトル「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」と書かれているように、プロメテウス神話を腰に据えています。この辺は深く探るといろいろありそうです。
一番注目が集まる怪物ですが、最初は出てきません。中盤、博士によって創造されてからも姿をめったに現しません。まあ、終盤はその見えない姿に怯えるわけとなるのですが。
さてさて、ざっと怪物の行動を追ってみると、まずフランケンシュタイン博士によって作られてから捨てられ、知識・言語を習得しながら人間に好意を抱き続けるも、そのおぞましい姿のために決して愛されることはありません。
そして、孤独に追いやられるのです。怪物は一人(一匹?)だけですから。孤独からくる憎しみを生みの親である博士に……。
読み終えると、今まであった怪物(フランケンシュタイン)像が壊れていきます。私にとってはホラー小説という感じもしませんでした。怖さも怪物の姿・外見などの不気味さではなく、見えない影に圧迫されるのです。