野沢尚破線のマリス (講談社文庫)講談社,2000


テレビ局を舞台にしたサスペンス物。第43回の江戸川乱歩賞受賞作でもあります。
ドラマや映画の脚本家をやってきた野沢さんならではの作品だと思います。登場人物たちが吐き出す映像の力についての言葉などには興味持ってしまいます。ニュースやテレビ番組の変遷や歴史などはそれだけでも十分魅力的です。
一番の特色は、情報の強みや怖さなどを思う存分味わうことが出来ることでしょう。タイトルにも関連があるであろう、マリスの除去(意味・悪意の除去)という単語の意味をどうしてもかみ締めなければいけなくなります。読んでいる最中も、読み終わった後も。
カタコンベ
読者の知らない世界で魅せてくれる作品と言う点では、同じく乱歩賞受賞作である神山裕右さんの『カタコンベ』を思い出します。このときは、ケイビングという言葉の意味自体知りませんでしたし。まあ、カタコンベのほうは作者自身、ケイビング体験者ではなかったらしいので、実際に経験したわけではないという違いはありますが。
殺人事件かもしれないという恐怖より、テレビ・マスコミへの恐怖をより一層感じました。華やかなイメージのあるテレビ業界の裏側を描くことに成功した作品だと思います。