SOKKI!-人生には役に立たない特技ｰ
秦建日子『SOKKI!-人生には役に立たない~』講談社,2006
deltazuluさんの感想を読んで手に取りました。早稲田大学の新入生だったころの本多が、美人の希美に誘われるがまま連れてこられたのが速記研究会。その速記研究会で使っていたカセットテープを、社会人になった本多がお引越しの最中に発見したことから始まる物語です。
希美は可愛い顔してエキセントリックな性格。『豚に食われろ』は名言ですね。そんな希美の行動に、のぼせ上がったり落ち込んだりと、一喜一憂する本多が情けないというか応援したくなるというか。
黒田という男も絡んでくるんですが、なかなか憎めないいいやつ。だから三人の関係が変化してしまうのがとても怖くて、中盤はびくびくしながら読んでました。
速記なんて技術がなくても、会話を録音すればいいわけです。なのに、なぜ省略文字などを真面目に覚えているのか？ ……ちょいとばかり寂しいけど、それでも温かみのある終わり方でしたよ。
冒頭のテープだって、これからの人生で役に立つことはまずないでしょう。だからって捨ててしまうのは、なんか微妙。役に立たないからって、思い出を捨ててしまえるようなやつこそ、『豚に食われろ』って感じですね。
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