スロー・リーディング その25
- 作者: 橋本紡,ヤスダスズヒト
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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☆「真琴ちゃんはちょっと涙を浮かべながら、そう言った」「あたしもちょっと涙を浮かべながら、そう言った」
これも反復法になるんでしょうか。この真琴ちゃんとの最後のお別れからお姉ちゃんと料理をする場面まで、感情を交えず事実を淡々と記す文章が続きます。
「手を振っていた」「帰った」など一ページ丸ごと地の文は全部「ーた」で終わり、文章をつなげず一行のみで終わっています。
△「うわー、切っちゃったよと思った直後、とんでもない痛みが来た」
感情が戻るのは、ページが変わった直後の包丁で手を切った瞬間まで一歩引いた目線のままです。その上、それさえも一瞬のことで、思考の対象はお姉ちゃんに移ります。
△「お姉ちゃんの手際は見事だった……(中略)……お姉ちゃんは本当になんでもできる人なのだ」
これに続いて、思考は漫然とお姉ちゃんのことやお姉ちゃんが呟いた短歌のことに繋がります。重大なイベントが起きても、ケガをしてさえこの調子では……何事にも上の空のときは、こんな描写になるんでしょうね。