さよならピアノソナタ―encore pieces

さよならピアノソナタ―encore pieces  Amazon
癒し4燃える3コミカル3
杉井光さよならピアノソナタ―encore pieces (電撃文庫)アスキーメディアワークス,2009
シリーズ感想
杉井光さんの作品感想
完璧に席を立ち上がってしまっていましたが、まさかのアンコール。驚きましたが、本当に素晴らしい。シリーズ完結後の短編集です。
楽譜の真相を知りたいと依頼される「Sonate pour deux」フェケテリコにベースとして参加する大学生・橘花の話「翼に名前がないなら
ユーリが真冬の制服を借りて女装する「ステレオフォニックの恋」先輩の過去を描いた「最後のインタビュー」最後に掌編も収められています。


複数人で曲を演奏するのは大変なことですね。ユーリは自分の気持ちに偽りがないと思えば思うほど、本当の音とはズレた音を奏でてしまいます。
先輩はバンドを破壊してしまう運命にいるんだと思い込んでしまいますし、橘花はもがれた翼の存在の代わりになろうともがき苦しみます。
でも、かけがえのないものを得られるみたいです。苦悩しつつも、2人だからこそできるハーモニーに憧れてしまったり、懲り懲りしていたはずなのに舞い戻ってきてしまったり、戦い方を勉強しようと飛び立つのですから。


器用な人だと1人で生きるほうが楽なのでしょう。けれど、楽譜探しを通して絆の強さを知ってしまったから、あの結末があったんだと思います。
夢を1人で膨らませていくことも面白いし情熱を傾けられることですが、感覚や思いを他の誰かと共有できることは本当に幸せなことですよね。
こうも素敵なアンコールを聞かされたら、感謝の気持ちを述べざるを得ないです。気の利いた伏線が張られているし、クラッシクの張り詰めた真摯な姿勢もバンドの熱く揺さぶる鼓動も楽しめるこのシリーズが大好きでした。