永遠のフローズンチョコレート

永遠のフローズンチョコレート  Amazon
シリアス4コミカル4恋愛2 <ピックアップ4>
扇智史永遠のフローズンチョコレート (ファミ通文庫)エンターブレイン,2006
扇智史さんの作品感想


全然日常的な設定じゃないのに、とてつもなく日常してる物語。殺人者である女子高生・理保と彼氏の基樹が主人公。ただ人殺しに重きが置かれているわけでもなく、不義の恋愛と人殺しがほとんど同じようなものとして扱われてる感じ。
人を殺してることもおかまいなしにいちゃいちゃラブラブ生活を送る二人ですが、ちゃんと殺したはずなのに死なない実和という女の子が登場することで、ある種穏やかな生活にも変化が出てきます。


といっても、不死身な部分がクローズアップされて日常が壊れていくのではなく、恋愛感情の絡まりから崩れていきます。
実和が基樹にちょっかいを出して理保に嫉妬させてみたりと、トンでもなく奇妙な状況なのに普通の恋愛してるから不思議な感じ。不思議なんだけど、妙にしっくりくるんですよよ。
恋愛部分だけ見れば正統派。基樹ももっと理保としっかり付き合えばいいのにと何度か思いました。
でも、私もこういう態度しちゃいそうな気がするし、したことあるように思う。最初の約束に縛られて身動きできないとか、自分の心をぐっと掴むエピソードもありましたね〜。


章タイトルをはじめミステリ好きというかラノベ好きというか、オタク心をくすぐるネタも満載。
こういうくすぐりには具体的な単語が使われていましたが、全体的には感覚的なもので語られているようにも思われました。抽象的な甘い会話の応酬が本書の最大の魅力でしょう。「引用なんて、何も伝えないのにね」と言う言葉を引用しておきます。


それにしても、二人の少女から構ってもらえる基樹の状況って、かなり夢のような状況ですね。少女たちは微エロにも対応で、お風呂場での情事には萌えました。
恋愛と殺人を同列で語るとか、なんか人殺しが軽く扱われているなとも思えるのですが、考えてみると恋愛のほうが遠くへ行ってしまったのかも。実は人殺しと同じくらい縁遠いものとして認識されていたりしますか? よく考えたことないけど。
理保が渡したバレンタインのチョコレートには、好きっていう想いが入っているのか、毒が入っているのか……凍結しているので中身が溶け出すことはないようですな。


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