重力ピエロ

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ミステリ4シリアス3癒し3
伊坂幸太郎重力ピエロ (新潮文庫)』新潮社,2006


兄弟と放火事件を絡めた物語。直木賞候補作。
ジョーダンバットを男女関わらず振り回すなど、奇天烈な性格の弟・春はもちろんですが、それを冷静に眺めているフリして意外に熱い兄・泉水もいい性格していますね。暗号などを面白半分で考えているようで、しっかりと考えているところが頼もしかったな。
ストーカーさんも面白かったです。少しだけの登場かと思いきや、予想外に後々まで絡んできましたし。
あっちこっちに話が飛んでいくのでどうなるのかと読み進めましたが、ストンと決まるんだからさすがです。
事件の方は放火、遺伝子、壁の落書きなど雑多なものが収束していくとは思いませんでしたねー。兄弟の過去なども関係してきますし。辛い過去ではありますが、家族の結束が強くて安心できました。そこまで重い気分にならずに済みますよ。


暗号解読などミステリ的な要素が芯にあるとはいえ、一番のポイントは兄弟の会話だと思いました。兄弟の会話が、落ち着いていて、少し学術的で、そして小気味よくて楽しいのですよ。
人生は考えるものじゃなくて、知るものなんだ」とかね。一言だけではピンときませんが、会話のキャッチボールの中では光るんですよ。読み終わった感想としては、面白かったと言うか楽しかったと言うか……一番しっくりくる言葉は「よかった」です。


伊坂幸太郎さんの作品感想


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