龍の館の秘密

龍の館の秘密  Amazon
ミステリ⑥コミカル④
谷原秋桜子龍の館の秘密 (創元推理文庫)東京創元社,2006


父親を探すためにスペインへの渡航費を稼ごうと、アルバイトに励む女子高生の美波が事件に巻き込まれるシリーズ二冊目。今回の表紙イラストは好みな配色。でも、一巻にもあったけど表紙下部の物体はなんだろう?


さて、夏休みということでまずは鎌倉へ向かいます。修矢の車に乗せてもらうイベントもあるんですが、素直になれずにいる美波はかわいいな〜。
だけど、少々心配になるところもあります。前回で懲りずに、武熊さんが紹介してきた妖しげなバイトにまた手を出してしまったりとかね。人が良すぎる美波は海外に行って大丈夫なんでしょうか。お父さんは心配です。
アルバイトの面接でも、あなたは正直ですかと問われ、「わたしはドジでマヌケですけど、正直だけが取り柄だと思っています。」とか答えてますし。強く生きて欲しいな。


そんな面接を経て今回美波が行う仕事は托鉢です。上にも書きましたが、妖しげな仕事です。まとめ役の土師田も胡散臭いし、さらには京都へ拉致されるし。不憫な娘です。
拉致された美波が連れて行かれるのが、トリックアートが施された龍の館という場所です。色々と館に仕掛けがありますが、美波の驚きっぷりが一番楽しいですね。
しかし、夜中にトリックアートの一つでもある、いましめの龍という置物が動いているところを美波が目撃するところから急展開。殺人事件が起きてしまいます。
簡単なはずの事件でしたが、助けを呼べる状況だったのになぜ大声を上げて人を呼ばなかったのかとか、美波の目撃証言と死亡時刻に誤差が生じるなど、謎が色々と残ってしまうわけで。
今回も颯爽と登場した修矢があっという間に謎を解いていきますが、三人のお嬢様がたによる推理合戦も前巻に引き続きちゃんとありますよ。特にお嬢様のかのこが、今回は全体通して大活躍ですね。女子高生がにぎやかにしてるのは、眺めてて楽しいな〜。


善人だらけの街」未発表の短編です。美波が武熊さんの紹介で臨床治験のバイトをするお話。どれだけ危険なバイトをすれば気が済むんでしょうかこの娘は。
このバイトのために、同じ部屋の臨床治験の常連っぽい人などと時間を共に過ごしていくんですが、そんな中で火事が起きてしまいます。
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おろ、前巻の短編「たった、二十九分の誘拐」も日常の謎系だったし、倉知淳さんの「幻獣遁走曲―猫丸先輩のアルバイト探偵ノート」での臨床治験を扱った一編も日常の謎だったことが印象に残っていたので、てっきりそういう話だと思っていましたが結構大きな事件だったな〜。
もちろん、謎の魅力だけでなく、修矢に自分の想いを告白したりとニヤニヤできる場面もわりとあった感じです。
それにしても美波の姿を見守っていると、いずれアダルティーなビデオにでも出演させられるんじゃないかと、お父さん不安と興奮でいっぱいです。って、既にこのアルバイトで裸の写真を撮られていましたね。……世の中、善人だけじゃないので気をつけるように。お父さんからの忠告です。


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