世界の中心、針山さん②

世界の中心、針山さん②  Amazon
燃える⑦ミステリ②ホラー①
成田良悟世界の中心、針山さん〈2〉 (電撃文庫)メディアワークス,2007


としれじぇ② 〜たくしぃえれじぃ〜」怖い話が大嫌いなタクシー運転手の話。幽霊を乗せてしまうタクシーという、よくある都市伝説なんだけども、成田さんの作品にしては珍しく不気味です。ホラーっぽさ全開。
神様の泡の悪夢なんて単語が出てきたので、他の電撃作品(甲田学人さんの「断章のグリムシリーズ」)をネタにしてるな〜と思っていたら、この話で登場する音楽ユニット名ジョン=デルタも同じく甲田さんの作品(「Missingシリーズ」)が元ネタなんですね。そういえばそうだ。
元ネタといえば、『オオカミさんとおつう先輩の恩返し』のカラーイラストでサマーのコスプレが披露されていたことにも気づかなかったな〜。章タイトルにもネタがありそうです。間章の「理由無き反魂」とか。


37564人目の悲劇」怪人よりも幹部よりも正義のヒーローよりも強い、下っ端の戦闘員の話。この戦闘員はもちろんのこと、彼を抱えてしまった秘密結社『クロック』の総統閣下も面白い設定です。強すぎる戦闘員っていう着眼点が既に勝ち組だと思う。
強くなってしまった経緯はさすがに笑ってしまった。だけど、一見バカバカしい設定なのにシリアスな展開になっていくのが不思議ですな。「あのマークは、まだ消したくない……!」のセリフがかっこいい〜。この燃え展開は最終章にも持ち越されます。


THE DON'T OF THE DEAD」殺し屋のお姉さんと、死霊術士の女の子と呪術士の男の子が出てくる話。怖さはほとんどないんだけども、ゾンビがたくさん出てきます。
呪術士の男の子は無邪気におかしいし、なまぬるさを嫌う殺し屋のお姉さんも人間としてどこか感覚がずれているので、二人が交わす会話が楽しかった。どんでん返しの結末もなかなか。なまぬるさがいい感じです。


柏木クロスの真っ赤な死」ここでこいつが主人公か、ってまずは驚いた。正義のヒーローが主役の話。
正義のヒーローとしての自分に対して徐々に疑問を持ち始め、真相が明かにされていきます。そして、真相を知ってからの展開が好きですね。「だけど……理屈じゃないんだ、そうだろ?」なんてセリフやだが、せめて――今だけは、格好をつけさせて欲しい。という思いなど、ヒーローらしいとは言えませんがビシッと決まっていますよね。ヒーローは強いよ。


針山さんを初め、ムーとルルのカップルやサマーちゃんや光島の事件など、前巻の事件に関連した話題も出てきます。様々な話がぴたりとはまっていく面白さもありますよ。全体通して、奢っている人がキーワードなんかな〜。だからなのか、どんな不測な事態にでもマイペースに対処する針山さんが一番強い気もするな。
一巻よりも二巻のほうが断然好みです。燃えラブ。でも、三巻が出るとしたらまた違った切り口の楽しさがありそうですね。続いていくと雪だるま式にキャラが増えていきそー。


成田良悟さんの作品感想