結構好みの話だったラブxコミカル


山崎ナオコーラ人のセックスを笑うな (河出文庫)河出書房新社,2006


第41回文藝賞受賞作であり芥川賞候補作。私が読んだのは単行本。美術の専門学校生・磯貝と二十歳も年上のユリとの恋愛小説。メッタ斬りされてたし、出だしの一文とか分かりにくい表現もあるけれど、それでも話が面白かった。私の好きな、日常を切り取った作品だったし。
磯貝がユリにデッサンのモデルをお願いされるところから始まるんだけれど、ユリの世間一般からのズレ具合がキュート。磯貝も素直なんだかなんなんだか。考えることも一見普通のようなんだけど、ユリと付き合ってるからかやはりどこかズレてる。夕日のきれいさを、「まるで透き通るマグロの切り身のよう」と例えていたりとかね。個人的にヒットした一文は「あのゆがみ具合がたまらない」と「ただ身近にいる人に優しさを注ぎたい気分なのかもしれない」かな。ものすごく短い話だけれども、すっと心の中に入ってくる文章は多かったように思う。静かなばかばかさに包まれた二人の雰囲気を楽しめたからかな。
ナオコーラという名前やタイトルとは裏腹に、穏やかに淡々と日常風景が描かれています。タイトルに笑うなとあるけど、多分読んでも爆笑はしない。でもクスリとすることはあると思う。どんなカップルでも、他人の視点で冷静に見ると変なところってどこかしらにありますよね。
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