前巻以上に色んなこと挑戦してますコミカルxミステリ


田中啓文ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))集英社,2006


暴走族上がりの落語家・竜ニが活躍するシリーズである笑酔亭謎解噺の二巻目。今回は前回よりミステリ要素が減って、落語について竜二が悩んだりするところがポイントになってきています。七話収録。
蛇含草」竜二の師匠・梅寿は、焼きたての餅を人にぶつける暴虐さをそうそうに披露してくれます。前巻の関西大会の成績から全国大会に出場することになった竜ニが、関東対関西の戦いに巻き込まれていく話。関東勢の力を見せつけられ迷う竜二ですが、やっぱり最後は梅寿さんが締めてくれますよ。餅投げるけどさ。「天神山」売れっ子タレントの付き人をやるはめになる竜ニの話。最初は芸がないと舐めきっていた竜ニだけれども、アイドルたちの雰囲気を読む力に圧倒され、またその後に泊まったホテルで化物が出る騒ぎが起きます。ちなみにタレントの名前がハテナさんなのですが、どうしてもこのはてなを連想して止められなかった。
ちりとてちん」前回の話の影響で、テレビの突撃レポをやることになった竜二の話。突撃なので、なかなかうまくいかず三度悩みます。オチが面白かった。「道具屋」ラジオ番組にも挑戦し始めた竜二ですが、なかなかよい反応はもらえず、本業の落語のほうもおろそかに。そんな折、梅寿の命令でよその一門である猿右衛門に稽古をつけてもらうことになります。この話の中で竜二が演じることになる前座話「子ほめ」は、私もやっていたのでついついその頃を思い出しながら読んでしまいましたよ。それも合わせて一番好きな話ですね。
猿後屋」仕事を手配してくれる芸能会社の新社長が落語嫌いでさあ大変。社長の就任式で若手芸人にまじって落語をやることになった梅寿。逆境の中やりとげるものの、社長からいちゃもんがついてしまう話です。「抜け雀」事務所を立ち上げることになった笑酔亭一門ですが、出だしから足並みは揃いません。金策に奔走する竜ニに、怪しげな社長や怪しげな屏風が絡んできます。「抜け雀」は先輩がやっていたネタなので楽しみにしていたのですが、演じられはしませんでしたね。「親子茶屋」自分の立場以上に、大きな舞台に立つことになった竜二のピンチが描かれています。この巻の中で唯一、自分の力で竜二がいい落語をしていたと思う。それにしても段々師匠に似てきたな〜。
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