いや、小さい子だから好くってわけじゃないですよ?ヒートxヒート


海原零銀盤カレイドスコープ〈vol.6〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)集英社,2005


最終章も見えてきたシリーズ六巻目。今回タズサが主人公ではなく、犬猿の仲であるドミニクと先輩の響子にスポットが当たっており、まずは二人の過去が交互に描かれています。二人につながりがあったりと、どちらも今までのイメージとは違った一面が見えてきて面白かった。
今まで嫌なやつにしか見えなかったドミニクが、子供に優しくしていたり新鮮な感じ。徐々に過去に遡っていきますが、小さい頃から女王と目されていたリアの演技を見て、勝てそうもないと思ってしまった瞬間とか辛いな。クリスチャンを強要されていた子供時代の苦難を思うと、不運としかいいようがないですね。さらにはタズサの勝手気ままな登場を憎むのも、うなずけてしまうかも。
響子さんのほうも、他の巻登場時とは違う印象ですよね。小さい頃から徐々に追っていくのですが、母親との確執とか痛いです。修学旅行での一幕で輝きがあればあるほど、不憫さが募ってしまいますよ。優等生な響子さんの心の内を見せられてしまうと、これまでタズサのアグレッシブさにどれだけ救われていたのか気づかされるような。オリンピックへかける思いもものすごく強く、勝たせてあげたくなっちゃいますね〜。
そしてこの巻最後の舞台は世界選手権。このシリーズ一番の醍醐味であるスケーティングシーンが、これでもかというほどあります。吸血鬼、弁護士、剣士など、今回はすべての選手がベストを尽くしたと言ってもいいので、どれもすばらしい。これは堪らないよ。それに、ドミニクのアメリカを背負ってるプレッシャーや追いつけない無力感、響子のオリンピックへの不安と期待……すべてが収束するラストもお見事。期待は高まるばかりですな。
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