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道尾秀介『シャドウ (ミステリ・フロンティア)』東京創元社,2006
母親を亡くしたばかりの凰介が、次々と遭遇する不自然な出来事の裏を探る話。主な登場人物は、凰介に父親の洋一郎、そして彼の友人である水城一家です。凰介がフラッシュバックのように見る不可思議なイメージや、水城の複雑な家庭内事情も絡んできます。
出だしが葬式であることや、洋一郎や水城が大学で精神病について学びまた同じ病院で働いているため精神病について触れられており、序盤から重苦しい雰囲気です。さらには、ゴミ箱を覗いてしまったことから、普通だと思っていた生活にも陰りが見えてきます。最後まで読まなくても真実に届きそうな感じを抱かせつつ、簡単にはたどり着けないのがこそばゆい。当たり前ですが。
精神病について書かれていることを除くと、わりとオーソドックスなミステリだなーと思っていたのですが最後の仕掛けに驚いた。読み返したくなるほど、うまくやられた感じ。この仕掛けが精神病とうまく絡んでいるのですよ。心を病んでいる人を推理小説で出すのはあんまり好かないのですが、これはいい。
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