ブーメラン方式にはちょっと笑ったシリアスxヒール


北村薫ひとがた流し朝日新聞社,2006


朝日新聞で連載されていたのを本にまとめたもの。ミステリ作品ではありませんでしたが、謎解き趣向はあり。アナウンサーの千波、作家の牧子、写真家の妻・美々の女三人を軸に、牧子の娘・さきや美々の夫・類に娘の玲の生活が、視点を入れ替えながら六章にかけて描かれています。穢れをはらうだけじゃなく、願いを書く、そんなひとがた流しも素敵ですね。
忘れていた記憶の絵葉書を、いきなり表に返したようだった。」と表現されている吊り橋の場面など、自然描写はやはりうまい。それに段落の最後の一文を読んでも北村さんっぽいと感じちゃいます。
絶品なのは第三章「道路標識」だと思う。玲ちゃんが撮影した道路標識の写真について類に相談すること始まる、父と娘の対話には心打たれました。これこそ北村さんの持ち味が十分に生かされていたところじゃないかな。また、北村さんの『月の砂漠をさばさばと』で出ていた女の子の成長した姿が読めるとは聞いていたので、玲ちゃんがその女の子だと思ったんですね。この玲ちゃんが、ココアと飲むチョコレートの違いなど素朴な質問をすることもありましたし。
と思ったけど、さば煮の女の子はさきちゃんだったか。……まあ、玲ちゃんがそれだけ存在感あったってことで。
ブクマ感想集同著者類似バッチ


③ さくら② 東京タワー Amazon① 月の砂漠をさばさばと Amazon
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