芥川龍之介侏儒の言葉・文芸的な、余りに文芸的な (岩波文庫)岩波書店,2003


芥川あたりの古典作品に触れる機会って正直少ないのです。だから、伊坂幸太郎さんの『チルドレン』(→感想)を読んでなかったら読まなかったと思います。『チルドレン』の中に出てきたので本書を手にとって見ましたが、これはお勧めです。
ある言葉についての芥川の感覚を書いたもの。
たとえば、「道徳」は
「道徳とは便宜の異名である」
「道徳の与えたる恩恵は時間と労力との節約である。道徳の与えたる損害は完全なる良心の麻痺である」

のような書き出し。皮肉が利いていて流し読みするだけでも十分な面白さを備えています。深読みも可能と充実しています。他に短いセンテンスで気に入ったのは下の二つ。
危険思想「危険思想とは常識を実行に移そうとする思想である」
忍従「忍従とはロマンティックな卑屈である」

パラドックスの社会学
芥川ってなかなか面白いことも書いているのだと認識を改めました。こういう自己矛盾的な発想の仕方は 森下伸也さんらの『パラドックスの社会学』にも近いことが書かれています。社会学の教科書でしたが、読んでてなるほどと思うこともありました。
そういえば、この『侏儒の言葉』もなかなか嫌らしい書きかたされていますが、この前、打順さんから教えてもらった「つまらない小説を褒めちぎるスレッド」はさらに……。